テキストサイズ

Memory of Night 番外編

第5章 美少女メイドを捕まえろ!


 そんな明をげんなりした様子でしばらく眺め、宵は盛大なため息とともに白旗をあげた。


「わかったよ。 着るよメイド服! 着ればいいんだろ着ればっ」


 半ばヤケクソのように叫び、明に渡されたウイッグの入った紙袋に右手を突っ込む。

 今まで震えていた明の肩がぴくりと動いたことに、宵は気付かなかった。

 中身など見ずに、感覚だけで掴んだそれを明の眼前に突きつける。


「かぶり物はこれで」


 髪型なんてこの際どうでも良い。選ぶというよりは、おもむろに引き当てていた。

 言われたウイッグも選んだし、とりあえず泣き止んでほしい。

 クラスメイトからの視線がいい加減痛かった。

 これで泣き止んでくれるのか、不安を抱えながらもその様子を見守っていると、ふいに明がずっと両手で覆っていた顔を上げた。

 その表情を見て、一瞬宵は固まる。なんととびっきりの笑顔だったのだ。


「ありがとー! 宵なら絶対協力してくれると思ったんだ! 文化祭を盛り上げるためだもんね!」

「…………は?」


 さっきまでの涙はどうしたのか。というより、頬には涙の痕さえなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ