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Memory of Night 番外編

第3章 熱々、バレンタインデー!


 宵はぐっと瞼を閉じて、その欲求をこらえた。

 他に晃のいたずらから逃れる術(すべ)が思い浮かばない。

 だが、ふいに晃の手の動きが止まった。そのまま股関からも離れていく。

 ようやくやめてくれる気になったのかとほっとしたが、その解釈は甘かったらしい。


「……っ!?」


 晃の手が、今度は宵のコートを捲り上げる。

 ブレザーの隙間からズボンに手をかけられ、ベルトは外さないまでも、その手をズボンの中に忍び込ませようとする。

 まさか、直接触る気なのかと宵が顔を強ばらせる。

 とっさに晃の顔を見るが、晃の視線は変わらず窓の外に向けられていた。

 直接触られたら、もういろいろと我慢できる自信がない。

 なすすべもなく、宵は観念して白旗をあげた。


「わか……ったから」


 絞り出すようにそれだけ告げると晃が宵に視線を戻す。


「何が?」


 平然とそんなことを言ってくるのがたまらなくむかつく。

 電車を降りたら、絶対思いきり怒鳴りつけてやろうと思う。


「……おまえの提案、呑むから」

「その言葉、忘れるなよ」


 念を押すような晃のセリフ。

 あまりにも理不尽すぎる気がしたが、宵には頷く他なかった。

 ようやく晃の手が離れたのは、結局目的の駅に着く二分ほど前だ。

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