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Memory of Night 番外編

第3章 熱々、バレンタインデー!


「まったく信っじらんねぇ! 変態! 節操なし!」


 満員電車を下り改札を抜けると、晃の予想通り、宵からは激しい罵詈雑言が飛んできた。

 まだ宵の頬は赤く上気したまま、瞳もうっすら濡れている。

 晃は悪びれた様子もなく、さらりとした口調で返した。


「よく言う。宵だって感じてたくせに」

「感じてなんか……っ」


 真っ赤になって言い返してくる宵に、晃は冷静な口調を崩さなかった。


「あんなに前硬くして気持ちよさげな顔をしてたくせに、とぼける気? 痴漢まがいなことをされても感じちゃうなんて、宵ははしたない子だね」


 耳元で囁かれ、甘さを含んだテノールの声に鼓動が高鳴る。

 晃は舌なめずりをした。

 濡れた舌が唇の端をなぞっていく。どこか野性的な色香がその仕草にはあって、ドキッとする。

 気がつけば、すでに周りに人気(ひとけ)はない。二人は住宅街に足を踏み入れていた。

 晃は宵の手を掴むと、その手を口元に持っていった。

 白いきめの細かな肌を掴み、しばらくそれを眺める。


「……何?」


 宵を一瞥し、ふいに晃は舌先で宵の指の間をチロチロと舐め始めた。

 その行動に宵が瞳を見開く。


「離せよ……っ」

「やだ」

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