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Memory of Night 番外編

第3章 熱々、バレンタインデー!


 四方から固められ、逃げ場はない。

 満員電車なこともあって、展望室の時のように晃の胸を押し返すこともできなかった。


「馬鹿、やめ……っ」

「しー。気付かれちゃうだろ、周りに」


 だったらこんなことをしないでほしい。

 そう目で訴えかけるも、晃はまったく聞く耳を持たなかった。

 膨らみ始めた宵のものの形をなぞるように、指を動かす。

 ショルダーバックで上手に手元を隠し、晃の視線は窓の外。

 そのやり方はやたら巧みだった。

 息を詰め、宵は必死に声を抑える。

 こんなに人の多いところで変な声を出したら、いやらしいこの行為が一発でバレてしまう。

 そんなの絶対耐えられない。

 宵は視線を晃から外し、触られている部分からどうにか意識をそらそうと試みた。

 晃はそんな宵を嘲笑うように、さらに手の動きを速める。


「ふ……っ」


 噛み締めた唇から、わずかに声が洩れる。

 中途半端に撫でられたそれは、すでに硬く張り詰めていた。

 展望室でも煽られ、ようやく鎮まったばかりなのに。

 すぐにでも欲望を弾けさせてしまいたかった。

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