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Memory of Night 番外編

第3章 熱々、バレンタインデー!


 結局晃は自分を家まで連れ帰りたかっただけらしい。

 だから場所もわきまえずキスを仕掛けてきたりして、宵を煽ろうとしたのだ。

 宵がその気になるように。

 思い返せば、最近はお泊まりが多かった。

 学校の帰りに晃の家に遊びにいっては、そのままずるずる朝まで過ごしてしまうのだ。

 晃の両親が仕事の日はたいてい。

 それがなんだかあまりに習慣化してきてしまい、そのだらしのなさを宵は一度嫌がったことがあった。

 せめて、次の日が平日の時は泊まらず家に帰りたい。

 そう言った宵の言葉を、晃は気にしていたのかもしれない。


(確かに明日は普通に学校だけど)


 今日が特別な日だということくらい、イベント事に疎い宵でもわかっていた。


「……帰るつもりなんて、ハナからなかったのに」


 ぼそりとつぶやいた声は、エレベーターが到着するちぃんという音にかき消される。


「ん?」


 振り向く晃を、宵は睨みつけた。


「ホントおまえって、根性悪りぃ!」


 晃が苦笑する。

 エレベーターが下に到着し、扉が開く寸前、晃はひときわ甘い声色で囁いた。


「――今夜は帰す気も寝かせる気もないから。覚悟して」

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