
胡蝶の夢~私の最愛~⑪【夢路・ゆめじ】
第33章 儚い恋
「いやっ、いや」
兵庫之助が強い力で抱きしめてくる。
大きな手が懐に差し入れられ、膚をまさぐる。突如として、豊かな膨らみを鷲づかみにされ、泉水は泣きながら叫んだ。
「止めて、止めてえ」
泉水の抵抗がかえって兵庫之助を煽っていたのだが、泉水はそんなことには気付いていない。
敏感な膨らみの先端を揉まれ、泉水の口から悲鳴が洩れた。
「いや―っ」
泉水は兵庫之助の腕の中で暴れた。
あまりに烈しく抵抗する泉水に、流石に兵庫之助も何かを感じ取ったようだ。ふと動きを止め、泉水を見つめた。
「泉水、お前、まだ、あの男のことを忘れられねえのか?」
その問いかけに、泉水は泣きながら、かぶりを振った。泣き止もうとしても、涙が後から後から溢れ出て頬をつたう。
「ち、違う―、違うの」
泉水はしゃくり上げながらも、懸命に自分の気持ちを伝えようとした。
「何が違うんだ?」
泉水から手を放した兵庫之助がその場にどしりと座った。どうやら、いつもの彼らしい分別と落ち着きを取り戻したらしい。まるで憑きものが落ちたように、その瞳が凪いでいる。
泉水は、心底からホッとした。
「済まなかったな」
どれくらいの沈黙があったのか、先に口を開いたのは兵庫之助の方であった。
「俺としたことが、何てことをしちまったんだ。まァ、惚れた女と一つ屋根の下に居て、俺もこれが我慢の限界だったのかもしれねえな。これでも、必死で自分を抑えてたんだぜ」
「いいえ、謝らなければならないのは、私の方です。兵庫之助さま、私は兵庫之助さまにお話していなかったことがあります」
泉水は意を決して、兵庫之助を見つめた。
もう、隠せない。果たして、この話を聞いた兵庫之助がどのような反応を見せるかは見当もつかなかったけれど、このまま隠し通すことはできない。それに、これまで何も問わず、泉水をここに置いてくれた兵庫之助に対して、これ以上の嘘をつくことはできなかった。
「話なら、お前は俺に何もかも話すと言ったじゃねえか。それを、俺がまだ先で良いと言ったんだ。何もお前が気にすることはねえよ」
兵庫之助が強い力で抱きしめてくる。
大きな手が懐に差し入れられ、膚をまさぐる。突如として、豊かな膨らみを鷲づかみにされ、泉水は泣きながら叫んだ。
「止めて、止めてえ」
泉水の抵抗がかえって兵庫之助を煽っていたのだが、泉水はそんなことには気付いていない。
敏感な膨らみの先端を揉まれ、泉水の口から悲鳴が洩れた。
「いや―っ」
泉水は兵庫之助の腕の中で暴れた。
あまりに烈しく抵抗する泉水に、流石に兵庫之助も何かを感じ取ったようだ。ふと動きを止め、泉水を見つめた。
「泉水、お前、まだ、あの男のことを忘れられねえのか?」
その問いかけに、泉水は泣きながら、かぶりを振った。泣き止もうとしても、涙が後から後から溢れ出て頬をつたう。
「ち、違う―、違うの」
泉水はしゃくり上げながらも、懸命に自分の気持ちを伝えようとした。
「何が違うんだ?」
泉水から手を放した兵庫之助がその場にどしりと座った。どうやら、いつもの彼らしい分別と落ち着きを取り戻したらしい。まるで憑きものが落ちたように、その瞳が凪いでいる。
泉水は、心底からホッとした。
「済まなかったな」
どれくらいの沈黙があったのか、先に口を開いたのは兵庫之助の方であった。
「俺としたことが、何てことをしちまったんだ。まァ、惚れた女と一つ屋根の下に居て、俺もこれが我慢の限界だったのかもしれねえな。これでも、必死で自分を抑えてたんだぜ」
「いいえ、謝らなければならないのは、私の方です。兵庫之助さま、私は兵庫之助さまにお話していなかったことがあります」
泉水は意を決して、兵庫之助を見つめた。
もう、隠せない。果たして、この話を聞いた兵庫之助がどのような反応を見せるかは見当もつかなかったけれど、このまま隠し通すことはできない。それに、これまで何も問わず、泉水をここに置いてくれた兵庫之助に対して、これ以上の嘘をつくことはできなかった。
「話なら、お前は俺に何もかも話すと言ったじゃねえか。それを、俺がまだ先で良いと言ったんだ。何もお前が気にすることはねえよ」
