
胡蝶の夢~私の最愛~⑪【夢路・ゆめじ】
第32章 変化(へんげ)
それは、かつての泉水への態度とも似て、まさに常軌を逸するほどであった。いや、そのときよりは更に酷いものだったろう。
朝から晩まで一日中、奥の寝所に千紗と二人きりで籠もりきりで、出てくることさえない。その中、こんな噂が真しやかに囁かれることになった。
泰雅が千紗に到底口にはできぬほどの辱めを与えているというである。千紗は酷い手業(てわざ)で犯されて、女になったというのだ。男を知らぬ生娘をじわじわとあの手この手で弄び、悦びを教え込んでいるのだ―と。
果たしてどこまでが真実かは判らないが、泰雅とかつて褥を共にしたことのある泉水には、大方の想像はついた。が、噂では、今の泰雅は更にその頃より容赦なくなっているようだ。もし、あの時、千紗の代わりに我が身が泰雅に身体を差し出していたら―、今頃は自分が千紗のような目に遭っていたのかもしれないと思えば、ゾッとする。
が、その代わりに、罪のない無垢な娘が慰みものになっているのかと思うと、暗澹たる想いに駆られた。
我が身を守るためには他人を犠牲にして厭わない。変わり果てた己れの醜さを突きつけられた。罪の意識と、やはりこれで良かったのだという安堵の想いの間で、泉水の心は揺れ動く。
美倻はその後も様々な情報をもたらしたが、それによれば、千紗は人の好い、可愛いだけが取り柄の凡庸な娘であった。乳母日傘で大切に育てられ、気働きもなく、泉水のように打てば響くといった才知の煌めきもない。が、泰雅には男を知らぬ生娘を嬲りものにするのがたまらないらしい。
泰雅との閨は、千紗にとって相当の苦痛を伴うものに相違ない。
―乱れるそなたが愛しうてならぬ。今宵は、どのような可愛らしい声を聞かせてくれるのであろうな?
羞恥で頬を染める娘の顔を覗き込み、千紗の身体が男の愛撫に狎れ淫らになってきたことを殊更強調する。千紗が身も世もない心地になれば、泰雅は暗い悦びに浸る。言葉で嬲り尽くした後は、嬲り飽きると、寝間に連れ込み弄ぶのが常であった。寝床では千紗を裸にして、思う存分姦淫する。あらゆる陵辱がそこで行われた。
朝から晩まで一日中、奥の寝所に千紗と二人きりで籠もりきりで、出てくることさえない。その中、こんな噂が真しやかに囁かれることになった。
泰雅が千紗に到底口にはできぬほどの辱めを与えているというである。千紗は酷い手業(てわざ)で犯されて、女になったというのだ。男を知らぬ生娘をじわじわとあの手この手で弄び、悦びを教え込んでいるのだ―と。
果たしてどこまでが真実かは判らないが、泰雅とかつて褥を共にしたことのある泉水には、大方の想像はついた。が、噂では、今の泰雅は更にその頃より容赦なくなっているようだ。もし、あの時、千紗の代わりに我が身が泰雅に身体を差し出していたら―、今頃は自分が千紗のような目に遭っていたのかもしれないと思えば、ゾッとする。
が、その代わりに、罪のない無垢な娘が慰みものになっているのかと思うと、暗澹たる想いに駆られた。
我が身を守るためには他人を犠牲にして厭わない。変わり果てた己れの醜さを突きつけられた。罪の意識と、やはりこれで良かったのだという安堵の想いの間で、泉水の心は揺れ動く。
美倻はその後も様々な情報をもたらしたが、それによれば、千紗は人の好い、可愛いだけが取り柄の凡庸な娘であった。乳母日傘で大切に育てられ、気働きもなく、泉水のように打てば響くといった才知の煌めきもない。が、泰雅には男を知らぬ生娘を嬲りものにするのがたまらないらしい。
泰雅との閨は、千紗にとって相当の苦痛を伴うものに相違ない。
―乱れるそなたが愛しうてならぬ。今宵は、どのような可愛らしい声を聞かせてくれるのであろうな?
羞恥で頬を染める娘の顔を覗き込み、千紗の身体が男の愛撫に狎れ淫らになってきたことを殊更強調する。千紗が身も世もない心地になれば、泰雅は暗い悦びに浸る。言葉で嬲り尽くした後は、嬲り飽きると、寝間に連れ込み弄ぶのが常であった。寝床では千紗を裸にして、思う存分姦淫する。あらゆる陵辱がそこで行われた。
