
燕尾服は似合わない
第2章 選ばれた問題児
「……執事…やるよ。」
「ん?なんて?」
俺の答えなど聞かなくても分かっているはずなのに、
"王子"はわざと聞こえないふりをして意地悪く微笑んだ。
その笑みに思わず拳に力が入る。
今までの俺だったらとっくに殴りかかっていた。
だが、そんな衝動を必死に押し殺し、俺は声を張り上げた。
「だから…!執事…やるって言ってんだよ!」
半ばヤケクソに叫ぶと、一瞬、部屋がしんと静まり返った。
「ふふ、そうか。そしたらここにサインを…あ、拘束されたままでは難しいかな。
伊織、鍵を。」
かちり。と小さな音を立て、
手首の重りがスっと軽くなる。
晴れて自由なはずなのに、
視界に並ぶ堅苦しい文字列が俺に現実を突きつけた。
「あえて言うが、君を信頼して鍵を外した訳では無いよ。僕が信頼を置いているのは伊織だけだから。…今のところはね。」
含みのある言葉に腹が立たない訳では無いが、
ここで暴れても無駄だということくらい俺だってわかっている。
「…ここに…サインすればいいんだな?」
"王子"が満足そうにこくりと深く頷く。
執事の差し出したペンを握りしめ、ゆっくりと名前を記す俺に驚いた声をあげたのは意外にも執事だった。
「全文、読まれなくてよろしいのですか?」
「ああ。こんなの読んでも難しくてわかんねーし。」
「…へぇ。」
『神城 聖奈』
自分の名前を書いたのは久しぶりだった。
最後の一画を書き終え、ペンを置く。
静まり返った部屋にその小さな音がやけに大きく響いた。
覚悟を決めて顔をあげると——そこには満面の笑みを浮かべた"王子"がいた。
「ようこそ!こちらの世界へ!」
"王子"は勢いよく立ち上がると、声高らかにそう言い放った。
……鬱陶しい。
続けて横からパチパチと音がする。
見ると執事がニコリと嬉しそうに拍手をしている。
「おめでとうございます。」
「今日から君は、僕の専属執事だよ。」
「…はぁ。」
「ん?なんて?」
俺の答えなど聞かなくても分かっているはずなのに、
"王子"はわざと聞こえないふりをして意地悪く微笑んだ。
その笑みに思わず拳に力が入る。
今までの俺だったらとっくに殴りかかっていた。
だが、そんな衝動を必死に押し殺し、俺は声を張り上げた。
「だから…!執事…やるって言ってんだよ!」
半ばヤケクソに叫ぶと、一瞬、部屋がしんと静まり返った。
「ふふ、そうか。そしたらここにサインを…あ、拘束されたままでは難しいかな。
伊織、鍵を。」
かちり。と小さな音を立て、
手首の重りがスっと軽くなる。
晴れて自由なはずなのに、
視界に並ぶ堅苦しい文字列が俺に現実を突きつけた。
「あえて言うが、君を信頼して鍵を外した訳では無いよ。僕が信頼を置いているのは伊織だけだから。…今のところはね。」
含みのある言葉に腹が立たない訳では無いが、
ここで暴れても無駄だということくらい俺だってわかっている。
「…ここに…サインすればいいんだな?」
"王子"が満足そうにこくりと深く頷く。
執事の差し出したペンを握りしめ、ゆっくりと名前を記す俺に驚いた声をあげたのは意外にも執事だった。
「全文、読まれなくてよろしいのですか?」
「ああ。こんなの読んでも難しくてわかんねーし。」
「…へぇ。」
『神城 聖奈』
自分の名前を書いたのは久しぶりだった。
最後の一画を書き終え、ペンを置く。
静まり返った部屋にその小さな音がやけに大きく響いた。
覚悟を決めて顔をあげると——そこには満面の笑みを浮かべた"王子"がいた。
「ようこそ!こちらの世界へ!」
"王子"は勢いよく立ち上がると、声高らかにそう言い放った。
……鬱陶しい。
続けて横からパチパチと音がする。
見ると執事がニコリと嬉しそうに拍手をしている。
「おめでとうございます。」
「今日から君は、僕の専属執事だよ。」
「…はぁ。」

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