
リーニエント
第9章 ニゲラ
「千種、まだ悩むの?」
「そう言ったの黒谷でしょ」
「うん、頭の中俺で一杯になった?」
「う、うるさいよっ」
分かってるくせにと、千種は黒谷を恨めしげに見る。
どうにかこの余裕ぶる仮面を外してみたい。
芽生えたのは、ちょっとした復讐心。
「黒谷……」
漸く人気が無くなった非常口近く。
足を止め黒谷を呼ぶと、振り向き様に繋いでいない手で彼のネクタイを掴んだ。
そのまま力任せに引き寄せ、ネクタイから襟口へ。千種自身も爪先立ちになると背を伸ばす。
「何、ちぐ……っ」
自分の名前を呼び終わる前に、その形の良い唇を塞いでいた。
「……は、うんんっ!?」
数秒間の短い重なりの後、黒谷から離すと強く引き戻される感覚。
爪先が浮き上がりそうな程強引に抱き竦められ、力任せに唇を奪われる。
「んう……っ、くろっ」
止めてと訴えようにも、開いた唇の隙間を狙って黒谷の舌が侵入。肩が震え、閉じた千種の瞼からは涙が溢れる。
「はあ……千種、好き。大好き……」
唇を少し離しては呟いて、再び千種のそこへ深く吸い付く。
黒谷からの大好きに対して、全身の体温が一気に上昇する。
両手は肩の位置ほど。いつの間にか黒谷の手により壁に縫い付けられ、もはや抵抗する力も奪われていた。
「なあ、千種。これってあの時の返事で良いんだよな?」
「……っ」
眩しそうに目を細めて聞いてくる黒谷にさんざん口内を弄ばれ、胸元のリボンタイが激しく上下している。
目尻に溜まった涙を彼の指に拭われ、声が発せられない状態の彼女はこくりと頭を垂れるしか出来なかった。
END
20260724

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