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リーニエント

第9章 ニゲラ


あの告白から、黒谷は千種への態度が少し変わってしまう。
いったい、何故?……そう、追いかけて来た彼に直接ぶつけた。

「それは少し違うかな。変わったって言うか、友達辞めただけ」

「辞めたって。え、黒谷それ、どういう……?」

驚きに、瞬く千種。開いた下唇がひくりと震えた。

「俺はね、千種と付き合いたい。あの時も言っただろ」

近付く黒谷の吐息に、千種は時が止まったかのように思考が停止した。

「『好き』だ……って」

「なっなにを!」

耳許で突然落とされた爆弾。
弾かれるように声を荒げたからか、軽く眩暈を起こす。
耳を押さえながらふらつく千種の目に入ったのは、向かいに立つ彼の上履き。
再び沸き上がる胸の苦しさに熱い息を密やかに吐いた。

「言ったよね、分かりやすく口説くって」

「……それ、わざとなんでしょ」

「何が?」

顔を上げれば、首を傾げた黒谷。
一年の頃の様な懐こい笑みを貼り付けたまま、千種の頬を指で軽く撫で上げる。

以前の様に震えないその指先。寂しさを感じると同時に、確信する。
こいつは、黒谷は私の気持ちに気付いてる。……絶対。

数日経った後に千種がやっと辿り着いた結論。
ずっと感じていた淡い思慕は、いつからか彼女自身により蓋を閉められていた。
それをこじ開けようとしているのが黒谷だ。

「や、黒谷……っ皆、見てる」

「見せてるんだよ」

「だめ……」

絡まる指先が熱くて、息が上がる。
まだ下校中の生徒が多い中、黒谷は千種と手を繋ぎ二年の廊下を練り歩く。
なんなのこの辱めは……。
千種は泣きそうになりながら、顔を隠すように黒谷の袖を引き寄せた。

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