
スイーツ・スイーツ
第4章 断ち切れるものならば
「黙秘権か」
放課後の文芸部室が、まるで取調室。
念のための松葉杖を借りて病院から帰り、午後から授業に出た私は、放課後、鏡子に任意同行を求められた。
理恵子先輩と菫ちゃんは、先に着いていた。
足を踏み外しただけ、これは自損事故だという私の主張に聞く耳を持たない鏡子だった。
瞳は、今日は学校に来ていた。
菫ちゃんもつきっきりで瞳を見張るわけにもいかず、
転落事故は、菫ちゃんが連絡で職員室に行っていた時間に起きた。
つまり、瞳にアリバイは無い。
と言うより、菫の監視がなくなるチャンスを待っての犯行と見たほうが自然だと、鏡子は主張した。
重要参考人の瞳は掃除当番で遅れるという。
その時間差を待ちきれず、先に私への尋問を始めた鏡子だが、いくら軽い捻挫だとはいえ、「大丈夫?」と心配するひと言もなかった。それだけ動揺し、激怒しているのか。
菫ちゃんは、何を考えているのか、傷めた私の足を大袈裟に包帯ぐるぐる巻きにした。これじゃかえって歩けないよ、と抗議する私に、
菫ちゃんは「これは作戦です」とだけ言った。
わけがわからない。
理恵子先輩は何も言わない。
ただ、鏡子の警策(きょうさく)を奪って持っていた。
鏡子が拷問に使うことを恐れているらしい。
「菫はどう思う?」
不意に鏡子から話を振らる菫ちゃんだった。
「……瞳の犯行ではないという気がします」
「根拠は?」
「ひどすぎます、階段で突き落とすなんて……下手したら、死ぬんですよ」
ぞくっ。
やっぱり、死ぬよね。
「なるほど」
「それに、ルールを決めたんでしょう。だったら、瞳は卑怯なことはしません」
「うーん」
鏡子が腕組みして、考えこむ。
「若葉、ほんとに顔は見なかったのか?」
「だって……」
あっ、危ない。
つい、“後ろからだったから”と答えるところだった。
「だって、誰もいなかったんだって言ってるでしょ」
かわりに、こう答えたが、かなり不自然だと、自分でも思う。
まずい。
――ドアがノックされた。
間違いなく、瞳だ。
「来ました。皆さん、静かにしていて下さい」
「わかってるわ」
菫ちゃんの謎の制止と、理恵子先輩の落ち着いた声。
菫ちゃんによれば、作戦があるらしい。
これから、何が起こるのだろう?
