
スイーツ・スイーツ
第4章 断ち切れるものならば
瞳は、驚いた。
どうしたんてすか!?と叫んで、駆け寄ってきた。
演技じゃないな、と菫はつぶやいた。
私の事故のことを知らされていない瞳が、
松葉杖や包帯の足を見たときにどんな反応を示すか──作戦は簡単で、効果的だった。
捻挫だけだと知って、瞳は安堵した。
それも演技には見えなかった。
◆
瞳は事情聴取にスラスラと答えた。
怪我をさせるという気は毛頭なく、私が怯えればそれだけで溜飲が下がる、それだけでよかったのだと告白した。
「なに考えてるんだ?」
「まだ言えません。黙秘権です」
「言えよ!」
拷問は始まらないよね、とハラハラしていたら、
「書き終わりました」
と声がした。
見ると、部室のホワイトボードの前に菫が立っていた。
そこに菫が書いたのは、瞳が菫の生徒手帳にメモさせたという文字――瞳の好きな言葉だという。
【An eye for an eye will make us all blind.】
「報復は、我々すべてを盲目にする」
訊かれもしないのに、鏡子が訳してくれる。
「誰の言葉?」
「マハトマ・ガンジー」
鏡子が知らないはずはないな。
ともかく、この言葉が座右の銘なら、私を傷つけるという宣言とおおいに矛盾している。
「非暴力の平和主義者だということはわかった。
で、それがなぜ若葉を脅した? 説明を求めたい」
「まだ言えません」
まだ?
さっぱり解けない謎。
じゃあ、誰だったの?
あの時、私の背中を突いたのは──
どうしたんてすか!?と叫んで、駆け寄ってきた。
演技じゃないな、と菫はつぶやいた。
私の事故のことを知らされていない瞳が、
松葉杖や包帯の足を見たときにどんな反応を示すか──作戦は簡単で、効果的だった。
捻挫だけだと知って、瞳は安堵した。
それも演技には見えなかった。
◆
瞳は事情聴取にスラスラと答えた。
怪我をさせるという気は毛頭なく、私が怯えればそれだけで溜飲が下がる、それだけでよかったのだと告白した。
「なに考えてるんだ?」
「まだ言えません。黙秘権です」
「言えよ!」
拷問は始まらないよね、とハラハラしていたら、
「書き終わりました」
と声がした。
見ると、部室のホワイトボードの前に菫が立っていた。
そこに菫が書いたのは、瞳が菫の生徒手帳にメモさせたという文字――瞳の好きな言葉だという。
【An eye for an eye will make us all blind.】
「報復は、我々すべてを盲目にする」
訊かれもしないのに、鏡子が訳してくれる。
「誰の言葉?」
「マハトマ・ガンジー」
鏡子が知らないはずはないな。
ともかく、この言葉が座右の銘なら、私を傷つけるという宣言とおおいに矛盾している。
「非暴力の平和主義者だということはわかった。
で、それがなぜ若葉を脅した? 説明を求めたい」
「まだ言えません」
まだ?
さっぱり解けない謎。
じゃあ、誰だったの?
あの時、私の背中を突いたのは──
