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スイーツ・スイーツ

第4章 断ち切れるものならば

瞳は、驚いた。

どうしたんてすか!?と叫んで、駆け寄ってきた。

演技じゃないな、と菫はつぶやいた。

私の事故のことを知らされていない瞳が、
松葉杖や包帯の足を見たときにどんな反応を示すか──作戦は簡単で、効果的だった。

捻挫だけだと知って、瞳は安堵した。
それも演技には見えなかった。



瞳は事情聴取にスラスラと答えた。
怪我をさせるという気は毛頭なく、私が怯えればそれだけで溜飲が下がる、それだけでよかったのだと告白した。

「なに考えてるんだ?」
「まだ言えません。黙秘権です」
「言えよ!」

拷問は始まらないよね、とハラハラしていたら、

「書き終わりました」
と声がした。

見ると、部室のホワイトボードの前に菫が立っていた。

そこに菫が書いたのは、瞳が菫の生徒手帳にメモさせたという文字――瞳の好きな言葉だという。

【An eye for an eye will make us all blind.】

「報復は、我々すべてを盲目にする」

訊かれもしないのに、鏡子が訳してくれる。
「誰の言葉?」
「マハトマ・ガンジー」

鏡子が知らないはずはないな。

ともかく、この言葉が座右の銘なら、私を傷つけるという宣言とおおいに矛盾している。

「非暴力の平和主義者だということはわかった。
で、それがなぜ若葉を脅した? 説明を求めたい」
「まだ言えません」

まだ?

さっぱり解けない謎。

じゃあ、誰だったの?

あの時、私の背中を突いたのは──

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