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スイーツ・スイーツ

第3章 攻防戦の果てに

再び、喫茶店ソノーレにて。

いま、理恵子先輩のスマホを借りてブログを、菫→私→鏡子の順に回し読みさせてもらったところだった。

「長文のわりに情報が少ない、悪文の見本」

理恵子先輩のブログ『真珠星の日記』への、鏡子の感想は辛辣だ。

「人のブログに文句つけない。だいたい非公開の記事なんだから」
「そう言いますけど、若葉が佳奈恵先輩を『お姉ちゃん』と呼ぶ理由が、結局わからないじゃないですか」

えっ、鏡子も知らないんだっけ?

「知らないもん。書きようがないわ」

説明しようか。
私は、カフェモカのカップを置いた。

「人命救助なんていうと大袈裟だけど、姉妹なら助け合って当たり前。だから、これからは姉妹になって、命の恩人という関係を終わらせようと、お姉ちゃんが提案したわけ」

「……強引だ」

鏡子に言われなくても、わかってるわよ。

あと、私がお姉ちゃんの人生を狂わせたのだから、私の人生もお姉ちゃんに狂わされて、バランスをとることした。
だから、お姉ちゃんは、私の進路を勝手に決めた。

滝見女子高校に入学すること。
それが、入江若葉の人生を狂わせる第一歩だったそうだ。

「言っちゃなんですけど、人生って、それくらいで狂うものですか」
菫の疑問はもっともだ。

「若葉のような秀才なら、どこの高校でも入れたのに、滝見なんかに入れなんて強制されたら……」
理恵子先輩、微妙に自虐的ですね。

「とにかく、佳奈恵先輩と若葉の間に、もはや遺恨はない。果たすべき恨みはない。
なぜ、瞳は若葉の命を狙うのか?」
「狙ってません」

まったく、この二人は……。

しかし、翌日、

鏡子の言葉は7割ほど成就したのである。

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