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コーヒーブレイク

第3章 贖罪のとき

ほぼ同時に、久美のガラケーと紫のスマホの着信音が鳴り、二人とも、すぐ画面を見た。

事情を知っている久美の反応は予測できていたが、初めて「それ」を見た紫は言葉を失っていた。

ショーツ一枚のヌード画像。

背中を見せ、やや目を伏せて、大人の雰囲気を出している。しかもモノクロだ。

学校で裸同然になるなんて、正気じゃないな。

しかし、これは芸術的作品ではない。
記録写真であり、証拠写真である。
──背中に残る傷跡。

「署名してくれた部に、この写真をお礼として送る?」
「やめとけ」
私の自虐的な言葉を、久美がたしなめた。

紫はコメントできそうもない。
まあ、私のお尻についてコメントされても困るが。

聡明な紫には、この部位に「自傷」できないことは説明されるまでもないはずだ。

じゃあ、誰が──紫が思索するのはそこだろう。

机の上にあるのは、嘆願書の束。
久美のリクエストを修正液で無力化した嘆願書。
あとは職員室に持って行くだけである。

「苦労したな」
「そうね。でも、やりがいはあった」
「文字通り、ひと肌脱いだな」
「・・・・・・笑えないんだけど」

その時、ノックの音がした。

返事をし、ドアを開ける。
そこにいたのは、清水鏡子だった。

「何か用?」
「……お礼と、……謝りたくて」
「え?」

いきなり、鏡子は廊下に土下座した。

「ちょ、ちょっと」
想定外すぎる!

「中に入ってもらえ」

予想していたかのように、久美が声をかけた。

「なお、柔道部では、土下座は全裸で行うものとされている」

廃部にしてやろうか!?

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