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さめがみ【3ページ短編】

第1章 未開の村


その翌日も漁に出た

今の時期は豊漁シーズンなので、次の季節になるまでに数が必要なのだそうだ


昨日の岩場には寄り付かないように離れていたのだけれど、やはり近くを回遊していたのかあの大きなサメと遭遇してしまった


慌ててしまったボクは隠れていた岩を蹴飛ばしてしまい、たまたまそのタイミングで岩の下に居たサメが挟まれてしまった

身動きが出来なくなってしまったサメは身悶えしているが、いくら大きなサメといえどもそう簡単に抜け出せそうになかった


すぐにボートで待つ仲間の元へ戻ると、

神さまを殺してはいけない、と言われてしまった


仕方なく元の場所に戻り深く潜る

サメはかなり弱っていて身悶えこそしないものの、弱々しくヒレを動かす程度だった


ボクが何とか岩を動かしてサメを助けてやる

するとさっきまで弱々しかったサメが急に暴れ出し、ボクの右腕に食らいついてしまった


必死に振りほどこうとするものの、深く食い込んだ歯はやすやすと離れてくれなかった

相手の鼻先を殴ってみると慌てて口を開いたものの、今度はボクの左腕に噛み付いてきた

あたりは血の海

これがすべてボクの血なのだろうか

血の匂いを嗅いだサメはますます興奮状態だったようだが、そこから先のボクの記憶はなかった


最後に見たのは村の男たちが総出でボクを助けようと寄り添ってくれているところまで


気がつくとあたりはすでに真っ暗で、彼らの住むテントなような家に運ばれていた

あたりはとても静かで誰も居ないようだった

立ち上がろうとするのだけれど、うまく身体を動かせない

上半身は包帯だらけでミイラ男のようだ

腕で床を支えて起き上がろうとするのだけれど、まったく力が入らない

これはやばい
きっと腕の神経をやられたに違いない
思うように腕が上がらず、バタバタまわりに打ちつけてしまっている

暗くてよく見えない

指先の感覚も無い

腕の先に何かが付いているだけのような感覚

文明があるところまで連れて行ってもらうにはヘリを呼ばなければ、と思っていたとき

すっ、とテントの中に人が入ってきた

顔なじみの若い女だった…

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