
さめがみ【3ページ短編】
第1章 未開の村
未開の土地の住民の民生調査をして半年
ようやく村の人たちからも笑顔で接してもらえるようになった
ボクはよそものだし、彼らのように日焼けした肌でもない
こんな筋肉もついていない男がいるのか、と村の青年にからかわれたりもした
逆に、村の女性陣達からは受けが良かった
野蛮な男たちと違いおそるおそる遠慮がちな男はここでは珍しいのかもしれない
男たちが狩りに出かけているあいだ、女たちは食事の支度をしたり、布を染めたりと常に仕事をしている
ボクも手伝いをさせてもらうのだけれど、男たちからは狩りの邪魔になるからと数日で相手にされなくなってしまった
何もしないわけにはいかず、女たちの手伝いをさせてもらう
始めこそこれは男の仕事じゃないと断られたが、蒸したり焼いたりすり潰したりと手伝っているうちに和気あいあいとした関係を築くことが出来た
半年前のよそもの扱いのころより、今はみんなに溶け込みはじめていると実感する
狩りも手伝い程度のことはさせてもらうのだけれど、やっぱり山へ入っての狩りは邪魔になるだけだった
でも魚や貝を捕るため海に潜るほうはなかなかの収穫が得られたので海へ狩りに出かけるときだけ呼ばれるようになった
彼らは私のことをジムと呼ばずジャジャと呼んだ
聞くと魚のヒレという意味らしい
泳ぐのが上手いからお前はジャジャだ、と言われているような気がする
ボクからしたら、彼らのほうが泳ぎが上手いはずなのだがやっぱりまだまだ客人扱いを受けているような気がする
そんなある日、
いつものように海へ漁に出かけたとき、いつもの貝のポイントで潜っていたときのことだ
岩場の影から大きなサメが現れた
ここへ来て半年、こんなに大きなサメをみたのは初めてだった
狩りを終えて夕食時に仲間たちと談笑していたとき、大きなサメを見たよと伝えると
それは海の神さまかもしれないと言われた
ボクは話しを合わせておいたのだけれど、彼らにとって恐るべき存在はイコール神さまなのだろうとあまり気にも止めなかった
