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ねこざめ【3ページ短編】

第1章 新しい仕事

ストリンからすれば“ただの気まぐれ”程度のものてあったが、どこかあの“ネコ”を見たときのような感覚が、彼に芽生えていた


そして、もうひとつ理由があった


彼には常に新しいものを生み出していくノルマがあった

宇宙船の狭い空間で自分の居場所を持続させるには、常に上級船民たちを満たさなければいけないものだ

それが食欲であれ、愛玩物であれ


アーラが目覚めたとき、
最初こそ自分が何処に居るのかわからなかったが、妙に見たことある光景に気付く

きっとストリンがカプセルに入れてくれたのだと理解した


誰も居ない研究ルームは数日間だれもやって来なかった

そこへひとりの女の子がモップを持って部屋に入ってきた

“ああ、もうボクの次の子が決まったのか”
とアーラはお気に入りの仕事を取られたような気がしてがっかりした

女の子はカプセルひとつひとつに目を奪われ、その度に手が止まっていた

少女の顔は驚きと笑顔にあふれ、
“ああ、ぼくも同じように楽しかったよ”と彼女のくるくる変わる表情に共感していた


そしていよいよアーラのカプセルの前まで来たとき


少女は「ひぃぃッッッ!?」と顔を青ざめ、
たちまち失禁してしまい、
その場に昏倒してしまった、


不思議に思うアーラ、

隣のカプセルに反射する自分の姿を見て驚いた


自分の身体はすでに人間ではなく、
恐ろしい歯を並べた“サメ”の姿だった……

そこでようやく気が付いた
あのときカプセルの中に居たネコは、前任者の子だったのだ、と

あの何か言いたげな寄り添いかたは
「早く逃げて」と言っていたのだ

しかし彼が気が付いたときには
すでに手遅れだったのだ




おわり


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