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ねこざめ【3ページ短編】

第1章 新しい仕事


ときおりかぷせるの中から、さっきの茶色い毛をした“ネコ”が彼にかまってほしそうに透明なガラスをカリカリしてくる

「なんだい、ネコちゃん?あそんでほしいの?」

ネコは何か言いたげな様子で必死にガラスの壁に爪を立てていた

ふふふ、と笑いながらアーラは作業に戻る


この人たちはこんなものまで作り出せて凄いな、
とアーラは思った

サボり癖があるニコシェはいつもキツイ汚れ仕事の現場ばかり回されていたが、従順な幼いアーラがストリンの目に止まってから研究施設の隔離ルームの清掃の担当に推薦されたのだ

せっかく良い仕事をまわしてくれて上司の顔を潰すわけにもいかない

ましてや他の子にこの仕事を奪われてはいけないと熱心に働くアーラを見て、上司のストリンもニンマリとしていた


そんなある日、ニコシェたちワーカーの悪ガキどもの鬱憤が爆発する

その対象はいつもアーラだ

エンジンルームの奥の方、誰も近付かない暗いオイル臭い場所に連れ込まれたアーラは
床に押さえつけられ、ズボンを脱がされ、
後ろから突きつけられた

幼いアーラにとって、ただ痛いだけの行為でしかないが抵抗するとさらに痛めつけられるので彼らの気が済むまで心を無にするしか無かった

あのときに見た“ネコ”の姿を思い浮かべてみたが、そんなもので心が癒される事も無かった


彼らの残酷ななぶり方は執拗で、何人も仲間たちが代わる代わる痛めつけてくる

ようやく解放され、うす暗いエンジン音が響く宇宙船の陰部のような場所でアーラはオイル溜まりに打ち捨てられ、

腹の中から吐瀉物を出し終わり、

うずくまっていた

高熱も発していて、立ち上がれない


彼が交代要員に発見されるまで数時間かかっており、すでに息も絶え絶え、死に近づいている状態にまで悪化してしまっていた


ワーカー達の騒ぎに気が付いたストリンはすぐにアーラを隔離ルームに運ばせて、あの大きな液体で満たされたカプセルに入れてやる


他のワーカーだったなら換えはいくらでも居るので、そのようなくずどもの騒ぎなど無視して、関係者はまとめて原子炉に放り込めと言い放っていただろう

使い捨てとして扱われる最下層のワーカーなので、あのまま放っておいても良かったのだが、ストリンはアーラに少しだけ愛着があったのかもしれない

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