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愛されてると勘違いだったので、推し活をやめようと思います

第7章 【選択1】

「なんでも屋に何の用だよ」



少年は私を疑うような目つきで睨んできた。



(さっきまではまるでヒーローみたいに私を助けてくれたのに……)



「そこはあんたのわがままを叶える場所じゃない」

「!」

「どうせ、ろくでもない依頼なんだろ? 親と喧嘩して〜とか、彼氏とよりを戻したい〜とか、くっだらねぇ! こんなスラム街に来てまでなんでも屋を頼るとか、どれだけ世間知らずのお嬢様なんだよ」

「……」

「金渡せばなんでもやると思った? スラム街の人間舐めんなよ? 自力で生きられねぇ奴は野垂れ死ぬしかねーんだよ!」



彼の冷たい眼差しと突き刺すような言葉が胸に突き刺さる。



確かに私は世間知らずのお嬢様だ。叔父さんと花梨に向き合う勇気もないし、戦う勇気もない、自分じゃ何もできない。でも……。



「……そうよ、私は何もわかっていなかった。ずっと安全な場所で守られて、何不自由ない生活をして……それで充分だったのに、叔父さんを困らせて……」

「なんだ、やっぱりわがままお嬢様かよ」

「でもね……ここに来たのは私なりに覚悟したことなの。あなたにとってはくだらないことかもしれないけど、私にとっては大切なことなの」

「……っ……」



震えた声で精一杯の気持ちを伝えると、彼の瞳が一瞬、揺らいだような気がした。




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