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愛されてると勘違いだったので、推し活をやめようと思います

第6章 家出

夜、私はここを離れることを決意した。
叔父さんにも花梨にも内緒で家出する。



モンスターから身を守るために荷物は最小限にした。リュックを背負って家を出ると、バッタリ小次郎さんと会ってしまった。



「……っ」



何か言われるのではないかと身構えたが、小次郎さんは虚ろな目をしていて、全く私を見ていなかった。



(私に気づいてない?)



何をするわけでもなく、小次郎さんはボーッとしたまま部屋に入っていった。



(なんだかいつもと様子がおかしいけど……助かったわ)



私は気を取り直して、マンションを後にした。
そして歩道橋で立ち止まり、ネオンが光る夜の街を眺めた。



「……」



色んなことを思い出す。
叔父さんにお世話になったこと、ビーと過ごした時間……。



思えば私はここでずっと守られていた。
ここにいれば、この先も安全に過ごせるだろう。



でも私の心はいつも不安定だった。
幸せなはずなのに満たされなくて、だけど何かしようとする気もなくて、ただ流れに身を任せていた。



今なら少しわかる。
私は自分の人生を他人に任せていたって。




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