
微熱に疼く慕情
第12章 【盲目的な愛が辿る一途】
会社で会う隼人さんと谷川さん以外は
極力、自分から連絡は取らないようにした
ゆっくり時間をかけてフェードアウトしていく
最低な私を彼らは罵るだろうか
同じような苦しみを与えてくるだろうか
私を、何処かに閉じ込めてしまうだろうか……
いつかは言わなきゃって思うんだけど
なかなか行動に移せなくて
だらしない自分にがっかりしている
不誠実にも程がある
本当にね………
「一華、お疲れ様、大好きだよ」
そう言ってハグしながらキスする隼人さんに流されて、
混み合うエレベーターの中で周りにバレないように小指を絡め合う私と谷川さん
その後何かがあるわけでもないのに期待だけ持たせて
スマホに届くメッセージには素っ気ない返事
今夜は本命と会う匂いを漂わせて諦めさせる
こんなの長く続かないってわかっているのに
何でいつまでもズルズルと……
そのうちまた、天罰でも下るんじゃないかなって思ってた
いつも通り、仕事に行って
いつも通り帰って来る
約束はない
未読を続けるわけにもいかないから
適当に返して時間を稼いでた
1人になる時間が必要だった
掻き乱すだけ掻き乱して自ら手放す
そんな女が一番嫌いだったはずなのに
今の自分だなんて………
「一華」
別に名前を呼ばれたからと言って驚いたりしない
どこかで覚悟していたのかも知れない
家の前で私を待っていたのは大智
スーツだから、仕事だったんだね
すぐ愛想笑い出来ちゃう自分に呆れてしまうよ
「大智、久しぶりだね」
「仕事、忙しいのか?」
「うん、ちょっとね、バタバタしてるかな」
家に上がるよね、このまま帰る可能性は低い
急に髪に触れてきたけどビクともしなかった
もし、万が一、大智じゃなくても、
他の誰かでも、刃物を持っていて刺されたとしても
きっと私はありのままを受け入れるんだと思う
なんて、物騒だね……
