
微熱に疼く慕情
第10章 【囚われない愛と持続的な関係】
「あ〜楽しかった、ずっと笑ってたよ?私」
帰り道、もう日も暮れかけている
「運転、代わらなくて本当に良かったんですか?」
「大丈夫、大丈夫、ちょっとした渋滞ですら楽しめる人だから」
「僕も今日は時間忘れるくらい楽しかったです」
「本当?良かったー」
プチ渋滞にハマってしまったので、ハンドルに凭れ掛かりエヘヘと笑う
手を差し出してきて「渋滞が抜けるまで」と指を絡ませてきた
手を繋いだ感触も良い
チラチラと前を見ながら親指で撫でられるのが心地良かったりもする
「時間、止まっちゃえば良いのに…」
音楽を流していたが、はっきりと聴こえた
ギュッと握り返して「本当にね」と返した
目線は前、彼も景色を眺めてる
繋いだ手から伝わる微熱がもどかしい
目の前でナビをセットする
目的地は前に登録していた彼の家の近所
「今日もこれで終わりですか…?」
「明日、仕事じゃないの?」
「遅番です」
「て事は、夜勤でしょ?ちゃんと休めなきゃ」
何か言おうとして、飲み込んだ感じも伝わってくる
親指で撫で返した
夕日に照らされる海沿いも抜けると一気に日が落ちて、辺りは暗くなっていく
こんな時に限って、信号もスイスイ行けちゃうの何でだろうね?
「帰ったら何するんですか?」とか聞かれて
「ネトフリ一択」って適当に答えて、今ハマってるサスペンスドラマの話をしたりした
その場で調べて「コレですか?」って見せてくる
「じゃ、僕も観てみたいんで一緒に観ませんか?」と誘ってきた
「え、私、結構中盤辺りだよ?最初から観ないと訳解んないからさ」
「もう少し、一緒に居たいです」
膝の上で拳をギュッと握って、勇気出したんだろうな
結構ストレートに攻めてくるのもギャップだね
もっと恥ずかしがり屋なのかと思ってた
