テキストサイズ

微熱に疼く慕情

第8章 【壊れていく劣情】






入院を余儀なくされた
栄養状態が良くなってから退院だなんて……
鞄を渡され
「連絡しないとダメな相手居るだろ」って
言われたけど……
明島さんの腕を掴んでやっと声が出せた



「ごめんなさい……」



ベッドに腰掛けて髪を撫でてくれる



「お前が謝るな……本当に、居るだけで良いんだよお前は……今度バカな真似したら承知しねぇぞ……心臓止まるかと思った」



びっくりした
あの明島さんから涙が溢れ出てる
肩を震わせ、目頭を覆う
無精髭……いつも綺麗にしてるのに



「本当にすまなかった……謝って済む話じゃないのもわかってる、一生かけて償わせてくれ」



違う……こんな事を言わせたいんじゃないの
ポロポロと零れ落ちる涙を拭ってあげて



「許して……ください、これからも、愛してください」



力強く抱き締められて少し痛かったけど抱き締め返した
その先で目が合った黒崎さんも少し涙ぐんでいる



「わかった……ありがとう」


「ん……2人で、愛してね?」


「一華……」


「黒崎さんとも2人で会うし、明島さんのお仕置きも受ける……この前は逃げてごめんなさい、怖くなって逃げたけど、2人を失う方がもっと怖かった…」



すぐに気付けなくてごめんなさい
ポッカリ空いた穴は、失う事を受け入れられない傷口だった
2人が来てくれて、また目の前に現れてくれて本当に、心の底からホッとしたの
抱き締めてくれて凄く生きてる気がした
やっと息が出来たような……そんな感覚



幸い、痣はすぐに消えていた
もし残ったままなら、病院が警察に通報していたかも知れないと思うとゾッとする



「キスして…」とお強請り
病室だし困らせちゃったけど優しいキスをしてくれた
すぐに看護師さんが入って来て咄嗟に黒崎さんが盾となり隠してくれたお陰で見つからなかった……





ストーリーメニュー

TOPTOPへ