
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第3章 接近~近づいてゆく心~
もし、なんてことは多分どころか、絶対にないだろう。まず現代にいつ戻れるかも判らないのだし、たとえ幸運にも戻ることができても、次にこの時代に帰ってこられるかどうかも保証はないのだ。
そこで、莉彩はハッとした。
今、自分は何と思った?
現代に―元々自分がいた両親の待つ現代から、この朝鮮王朝時代に〝帰ってこられる〟かどうかと考えなかったか?
自分にとっては、現代こそが生きるべき時代であるはずなのに。
莉彩はその時、悟った。彼女にとっては、もう、二十一世紀の日本は帰るべき場所ではなくなってしまったのだ。〝帰る〟という意識は、目的とする場所が自分にとって、どれだけ大切かを意味する。自分がそこにいるべき場所だと思うからこそ、人は帰巣本能が働くのだ。
そして、今の莉彩にとって、帰るべき場所は現代の日本ではなく、一四〇〇年代後半の朝鮮になった。そのいちばんの原因は、この時代に愛する男ができてしまったから。この時代に生きる男に恋してしまったからだ。
しかも、最初は知らなかったとはいえ、好きになった相手は国王だった―。
―私に抱かれる覚悟もできてはおらぬのに、傍にいたいなどと申すな。
耳奥で昨夜の王の言葉がこだまして、莉彩は暗澹とした想いになった。
一晩中泣き続けたせいで、眼が腫れぼったい。
王の言うことは当然だといえた。口で幾ら好きだ、この時代にいたいのだと訴えてみても、いざ王に抱かれる場面になると、莉彩は烈しく抵抗したのだ。
あの時、傷ついたのは多分、莉彩ではなく王の方だろう。所詮は世間知らずの小娘が口先だけで好きだと言っているのだと思われても仕方ない。
そう思われても仕方がないとは判っていても、莉彩は哀しかった。
もしかしたら、昨夜の出来事で王には完全に愛想を尽かされ嫌われてしまったかもしれない。
それでも、昨夜、あのまま王が思いとどまることなく最後まで進んでいたらと想像しただけで、莉彩は身震いするほど怖かった。
むろん、二十一世紀に生きる女子高生である莉彩は、基本的な性的知識はある。男女が結ばれる行為というのも頭では理解しているつもりだ。
そこで、莉彩はハッとした。
今、自分は何と思った?
現代に―元々自分がいた両親の待つ現代から、この朝鮮王朝時代に〝帰ってこられる〟かどうかと考えなかったか?
自分にとっては、現代こそが生きるべき時代であるはずなのに。
莉彩はその時、悟った。彼女にとっては、もう、二十一世紀の日本は帰るべき場所ではなくなってしまったのだ。〝帰る〟という意識は、目的とする場所が自分にとって、どれだけ大切かを意味する。自分がそこにいるべき場所だと思うからこそ、人は帰巣本能が働くのだ。
そして、今の莉彩にとって、帰るべき場所は現代の日本ではなく、一四〇〇年代後半の朝鮮になった。そのいちばんの原因は、この時代に愛する男ができてしまったから。この時代に生きる男に恋してしまったからだ。
しかも、最初は知らなかったとはいえ、好きになった相手は国王だった―。
―私に抱かれる覚悟もできてはおらぬのに、傍にいたいなどと申すな。
耳奥で昨夜の王の言葉がこだまして、莉彩は暗澹とした想いになった。
一晩中泣き続けたせいで、眼が腫れぼったい。
王の言うことは当然だといえた。口で幾ら好きだ、この時代にいたいのだと訴えてみても、いざ王に抱かれる場面になると、莉彩は烈しく抵抗したのだ。
あの時、傷ついたのは多分、莉彩ではなく王の方だろう。所詮は世間知らずの小娘が口先だけで好きだと言っているのだと思われても仕方ない。
そう思われても仕方がないとは判っていても、莉彩は哀しかった。
もしかしたら、昨夜の出来事で王には完全に愛想を尽かされ嫌われてしまったかもしれない。
それでも、昨夜、あのまま王が思いとどまることなく最後まで進んでいたらと想像しただけで、莉彩は身震いするほど怖かった。
むろん、二十一世紀に生きる女子高生である莉彩は、基本的な性的知識はある。男女が結ばれる行為というのも頭では理解しているつもりだ。
