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約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever

第3章 接近~近づいてゆく心~

「は、放して」
 莉彩は本能的な恐怖を憶え、王の手から逃れようと空いた方の手を振り回して抗った。
「いやっ」
 が、王の力は想像もできないほど強く、莉彩は片手をあっさりと掴まれ、既に拘束されていた手と纏めて固定された。懸命にもがくが、王は楽々と片手で莉彩の両手を掴み、すべての動きを封じ込めている。
 王の手が伸び、莉彩のチョゴリの紐にかかる。
「殿下―、お止め下さいませ」
 莉彩は泣きながら訴えた。
 チョゴリの紐はあっさりと解かれ、王は依然として莉彩の両手を纏めて掴んだまま、空いた方の手でチョゴリを脱がせた。白の下着も続けて剥ぎ取られる。
「あっ」
 莉彩は悲痛な声を上げた。
 白い上衣の下には幾重にも巻いた布が巻かれている。重ねた布は胸の膨らみの下半分ほどしか隠してはいなかった。きつく巻いているので、布が胸を押し上げるような形になり、豊かな乳房や谷間がくっきりと現れている。
 王の視線が莉彩の胸に注がれている。
 そのまなざしが焔のような熱を帯びていた。
 片手が剥き出しの肩に触れてきて、なめらかな雪膚をまるで蝶の羽のように指先でそっとなぞる。
「い、いやっ、怖い」
 莉彩が泣きながら嫌々をするようにかぶりを振ったそのときだった。
 王が小さな溜息をつき、莉彩の肩から手を放した。
「ずっと私と共にこの時代で生きてゆくと、先刻、そなたはそう申したではないか。私に抱かれる覚悟もできてはおらぬのに、私の傍にいたいなどと申すな」
 王は乾いた声音で言い、立ち上がった。
 王が嫌いなのではない。ただ無性に怖かったのだ。莉彩はまだ十六歳の高校生だ。この時代は早婚だったから、莉彩の年齢は立派なまさに適齢期だったのだが、二十一世紀の現代では、十六で結婚する子なんて、滅多といない。
 ましてや、莉彩は三年も付き合ったボーイフレンドの慎吾がいながら、キス一つしたことはなかったのだ。性的なことにいつては知識も経験も豊富な現代っ子らしくない奥手さが王の突然の豹変を受け止めきれなかったのだともいえる。

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