
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第3章 接近~近づいてゆく心~
「殿下。そのような仰り様は、殿下にはふわさしくありません。殿下は、この国(朝鮮)の誇りではございませんか。私は、民の父であり、国の父である殿下には後世までも聖君(ソングン)として語り継がれるような君主になって頂きたいのです。それが、私の願いです」
その時、莉彩の中でもう一人の自分が呟く。
―真実のところ、そうなの? このまま二十一世紀の日本に帰って、もう二度と殿下と逢えなくなっても良いの?
いや、そんなのはいや。
莉彩は心の中で叫ぶ。
本当は帰りたくない。自分がここにいることで、たとえ歴史に歪みが生じてしまったとしても、構いはしない。この時代にいるべきではない自分が拘わることで、歴史を変えたくないだなんて、もっともらしいことを言う自分は、とんでもない偽善者だ。
もちろん、父や母、慎吾や親友たちには逢いたい。でも、大切な家族や友達よりももっと大切なものがこの世界にできてしまった。だから、元いた世界を懐かしいと思うけれど、やっぱり、今のまま、この世界にとどまりたい。
それが、莉彩の本音なのだ。
刹那、莉彩の唇から迸るように言葉が溢れていた。
「嘘です。私だって殿下と同じ、諦めが悪いんです。私だって、本当は殿下のお側を離れたくはありません。ずっと、ずっと、殿下のお側にいたい」
大粒の涙の雫が莉彩の頬をころがり落ちる。
「そのようなことを申しても良いのか。一度、自分のものにしてしまえば、私はそなたを二度と元の世界には帰さぬぞ」
王の瞳は凪いだ海のように静かだった。
だが、その分、感情が読み取れない。
先刻までとは異なり、抑揚のない口調も彼の心境を示してはくれなかった。
突然、王が莉彩の細い手首を掴んだ。
「殿下!?」
莉彩の声に愕きと困惑が混じる。
「それでは、今、ここで、そなたを私のものにする。さすれば、そなたは、もう二度と元の世界に戻ることはない。そなたも私と同様、共にいることを願っている。そうなのであろう?」
王が少し力を込めると、莉彩の華奢な身体は王の逞しい腕の中に倒れ込んだ。
その時、莉彩の中でもう一人の自分が呟く。
―真実のところ、そうなの? このまま二十一世紀の日本に帰って、もう二度と殿下と逢えなくなっても良いの?
いや、そんなのはいや。
莉彩は心の中で叫ぶ。
本当は帰りたくない。自分がここにいることで、たとえ歴史に歪みが生じてしまったとしても、構いはしない。この時代にいるべきではない自分が拘わることで、歴史を変えたくないだなんて、もっともらしいことを言う自分は、とんでもない偽善者だ。
もちろん、父や母、慎吾や親友たちには逢いたい。でも、大切な家族や友達よりももっと大切なものがこの世界にできてしまった。だから、元いた世界を懐かしいと思うけれど、やっぱり、今のまま、この世界にとどまりたい。
それが、莉彩の本音なのだ。
刹那、莉彩の唇から迸るように言葉が溢れていた。
「嘘です。私だって殿下と同じ、諦めが悪いんです。私だって、本当は殿下のお側を離れたくはありません。ずっと、ずっと、殿下のお側にいたい」
大粒の涙の雫が莉彩の頬をころがり落ちる。
「そのようなことを申しても良いのか。一度、自分のものにしてしまえば、私はそなたを二度と元の世界には帰さぬぞ」
王の瞳は凪いだ海のように静かだった。
だが、その分、感情が読み取れない。
先刻までとは異なり、抑揚のない口調も彼の心境を示してはくれなかった。
突然、王が莉彩の細い手首を掴んだ。
「殿下!?」
莉彩の声に愕きと困惑が混じる。
「それでは、今、ここで、そなたを私のものにする。さすれば、そなたは、もう二度と元の世界に戻ることはない。そなたも私と同様、共にいることを願っている。そうなのであろう?」
王が少し力を込めると、莉彩の華奢な身体は王の逞しい腕の中に倒れ込んだ。
