
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第11章 Half MooN
また聖泰がその間に国王以外の男と通じて生んだ不義の子であるとも専らの噂となっていたのだ。
あのまま莉彩が宮殿にとどまっていれば、いずれ近い中に大臣たちが莉彩と聖泰の処遇について騒ぎ立て始めただろう。そうなっては、徳宗が窮地に立たされることになる。彼はいかなる手段を講じても莉彩母子を守ろうとしただろうが、国王ですら朝廷の意見を軽んじることはできない。
仮に徳宗が朝廷の総意に逆らえなかった場合、莉彩と聖泰は何らかの処罰を受ける。最悪の場合、死罪となっても不思議ではない。当時、姦通は女性にとっては、それほど重い罪とされていた。ましてや、側室とはいえ、莉彩は国王の妻なのだ。
「私と息子の存在が殿下にとって重荷となっていることは判っておりました。私たちがいることで、折角上手くいっている朝廷と殿下の間に不要な波風が立ってはなりませぬ」
あらゆる意味で、自分の存在は徳宗の妨げとなる―、そう判断したからこその別離であった。
「それなら! 私はただの男になろう。そなたのためなら、私はすべてを棄てる」
徳宗は手を伸ばし、莉彩の頬を流れ落ちる涙の雫を拭った。
「殿下、それだけはなりません!」
莉彩の眼からはとめどなく涙が溢れ出した。
「私が―最も怖れていたのは、私という存在が殿下の治世の曇りとなることだったのです。お願いでございますから、二度とそのようなことは仰らないで」
徳宗が莉彩を引き寄せ、その髪に顎を埋めた。
「莉彩。私はずっと考えてきた。そなたのために、私は何をしてやれるだろうとそのことばかりをずっと考えてきたのだ。私と生きるためには、そなたはすべてのものを―これまで暮らしてきた時代、両親、あらゆるものを棄てねばならぬ。だが、私はそなたにだけ棄てることを強いるばかりで、自分は何一つ棄てようとはしなかった。自分の生まれた時代に暮らし、育ってきた環境から抜け出すことなど考えたこともなかった」
あのまま莉彩が宮殿にとどまっていれば、いずれ近い中に大臣たちが莉彩と聖泰の処遇について騒ぎ立て始めただろう。そうなっては、徳宗が窮地に立たされることになる。彼はいかなる手段を講じても莉彩母子を守ろうとしただろうが、国王ですら朝廷の意見を軽んじることはできない。
仮に徳宗が朝廷の総意に逆らえなかった場合、莉彩と聖泰は何らかの処罰を受ける。最悪の場合、死罪となっても不思議ではない。当時、姦通は女性にとっては、それほど重い罪とされていた。ましてや、側室とはいえ、莉彩は国王の妻なのだ。
「私と息子の存在が殿下にとって重荷となっていることは判っておりました。私たちがいることで、折角上手くいっている朝廷と殿下の間に不要な波風が立ってはなりませぬ」
あらゆる意味で、自分の存在は徳宗の妨げとなる―、そう判断したからこその別離であった。
「それなら! 私はただの男になろう。そなたのためなら、私はすべてを棄てる」
徳宗は手を伸ばし、莉彩の頬を流れ落ちる涙の雫を拭った。
「殿下、それだけはなりません!」
莉彩の眼からはとめどなく涙が溢れ出した。
「私が―最も怖れていたのは、私という存在が殿下の治世の曇りとなることだったのです。お願いでございますから、二度とそのようなことは仰らないで」
徳宗が莉彩を引き寄せ、その髪に顎を埋めた。
「莉彩。私はずっと考えてきた。そなたのために、私は何をしてやれるだろうとそのことばかりをずっと考えてきたのだ。私と生きるためには、そなたはすべてのものを―これまで暮らしてきた時代、両親、あらゆるものを棄てねばならぬ。だが、私はそなたにだけ棄てることを強いるばかりで、自分は何一つ棄てようとはしなかった。自分の生まれた時代に暮らし、育ってきた環境から抜け出すことなど考えたこともなかった」
