
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第7章 対立
大妃は義理の息子である徳宗を烈しく憎悪している。先王に熱愛されていた徳宗の生母を呪い、生後まもなく失った自分の娘の代わりに健やかに育った徳宗を憎悪した。
何故、良人である先王は私を蔑ろにされたのか?
何故、私の産んだ姫は夭折したのに、あの憎らしい女の生んだ王子はこんなにも健康で立派に生い立ったのか?
私は、あの女の産んだ子になど、王位を継がせたくはなかった。
折角、私の姪を妻として与えてやったのに、中殿になった姪を哀しませ、愛妾である伊淑儀ばかりを偏愛した憎らしい男。姪は、この不実な男のせいで、亡くなったのだ。
大妃の心の叫びが、莉彩にも届いてくるようだった。
その哀しみは同じ女性として理解できる。けれど、どうして、そこまで他人を逆恨みするのだろう。
良人が振り向かなかったのは、自分の高慢さのせいだと気付けなかったのか。腹を痛めて生んだ翁主が夭折した時、哀しみに負けないで徳宗を我が子として愛することはできなかったのか。
大妃は徳宗の大切にしているものを徹底的に憎み、傷つけようとする。だからこそ、莉彩を新たな標的にし、こうして縛りつけて鞭打とうとするのだ。
「ええい、煩い。孔尚宮!」
金切り声で命じられ、孔尚宮が鞭を振り上げた。
ヒュッと空をつんざく音が響き、莉彩の背中に灼けつくような痛みが走った。十年前に大妃に鞭打たれたときの屈辱と痛みがまざまざと甦る。
しかし、今度の痛みはあの数倍だ。何しろ、台に縛りつけられ、背中を思いきり鞭打たれているのだ。直にチョゴリは破れ、その下の白くやわらかな皮膚は裂け血が流れるだろう。
それでも良い。大妃の憎しみを、この女の背負う怨念を殿下の代わりにこの身が受けているのだと思えば良い。
たとえ、そのために息絶えてここで生命を落としたとしても、あの男(ひと)のためならば、私は歓んでこの生命を差し出す。
私がこの時代で生きる意味は、ただあの男の傍にいられることにあるのだから。あの男は私のすべて。だから、あの男への憎しみを代わりにこの身に受けろと言われるのなら、私は自ら進んで鞭打たれる。
何故、良人である先王は私を蔑ろにされたのか?
何故、私の産んだ姫は夭折したのに、あの憎らしい女の生んだ王子はこんなにも健康で立派に生い立ったのか?
私は、あの女の産んだ子になど、王位を継がせたくはなかった。
折角、私の姪を妻として与えてやったのに、中殿になった姪を哀しませ、愛妾である伊淑儀ばかりを偏愛した憎らしい男。姪は、この不実な男のせいで、亡くなったのだ。
大妃の心の叫びが、莉彩にも届いてくるようだった。
その哀しみは同じ女性として理解できる。けれど、どうして、そこまで他人を逆恨みするのだろう。
良人が振り向かなかったのは、自分の高慢さのせいだと気付けなかったのか。腹を痛めて生んだ翁主が夭折した時、哀しみに負けないで徳宗を我が子として愛することはできなかったのか。
大妃は徳宗の大切にしているものを徹底的に憎み、傷つけようとする。だからこそ、莉彩を新たな標的にし、こうして縛りつけて鞭打とうとするのだ。
「ええい、煩い。孔尚宮!」
金切り声で命じられ、孔尚宮が鞭を振り上げた。
ヒュッと空をつんざく音が響き、莉彩の背中に灼けつくような痛みが走った。十年前に大妃に鞭打たれたときの屈辱と痛みがまざまざと甦る。
しかし、今度の痛みはあの数倍だ。何しろ、台に縛りつけられ、背中を思いきり鞭打たれているのだ。直にチョゴリは破れ、その下の白くやわらかな皮膚は裂け血が流れるだろう。
それでも良い。大妃の憎しみを、この女の背負う怨念を殿下の代わりにこの身が受けているのだと思えば良い。
たとえ、そのために息絶えてここで生命を落としたとしても、あの男(ひと)のためならば、私は歓んでこの生命を差し出す。
私がこの時代で生きる意味は、ただあの男の傍にいられることにあるのだから。あの男は私のすべて。だから、あの男への憎しみを代わりにこの身に受けろと言われるのなら、私は自ら進んで鞭打たれる。
