
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第7章 対立
「大妃さま、私は誓って、そのようなことを致してはおりませぬ」
それでも身の潔白の証だけは立てたいと口にするが、大妃は嘲笑うような笑みをその面に浮かべているだけだ。
「内命(ネイミヨウ)婦(プ)の監督は後宮で行うものであり、たとえ国王殿下とはいえども無闇に口出しはできぬのがならわし。そなたも仮にも淑容の位階を賜る側室であれば、そのようなことくらい存じておろう。後宮内で起きた揉め事を殿下に訴え、泣きつこうとは殿下にお仕えする者としての配慮が足らぬ。ご政務でお忙しい殿下をつまらぬことでお患わせてしてはならぬとそのようなことが判らぬのか!」
「大妃さま、それは違います。淑容さまは何も悪くはございません。淑容さまから国王殿下に申し上げて頂くと言ったのは、この私の落ち度にございました。今日、私と諍いになったのは、三ヵ月前、淑容さまを南園の池に突き落とした者たちでございました。ゆえに、私はつい悔しくて、口走ってしまったことでございます」
崔尚宮の傍らに控えていた花芳が泣きながら叫んだ。
「守花芳、お黙りなさい」
莉彩が背後を振り返った。
―それ以上、大妃さまに楯突いては駄目。
眼顔で花芳を諭す。
「ええい、控えよッ。全く、淑容が礼儀知らずなら、仕える女官までが礼儀を知らぬと見える。大妃であるこの私に直接、話しかけてくるとは礼儀知らずもはなはだしい」
「孔尚宮。やりなさい」
大妃が顎をしゃくると、孔尚宮が鞭を持って莉彩に近づいた。
「今日という今日は、その歪みきった性根をたたき直してやろう。淑容、そなたは大方、その色香で殿下を夜毎誑かし、ご寝所で様々にねだり事をしておるのであろう。こたびの一件でそれがよく判った」
大妃がはるか前方から唾棄するように言う。
「大妃さま、それはあまりに酷いお言葉にございます。私は、ご寝所でそのようなふるまいを致したことは一度としてございません!」
莉彩の眼に悔し涙が滲む。
何故、どうして、この女はここまで自分を貶め、憎むのか。莉彩を憎むのは、大妃が王を憎んでいるからだ。徳宗が見向きもしない側室であれば、大妃もまた莉彩のことなぞ歯牙にもかけなかったろう。
それでも身の潔白の証だけは立てたいと口にするが、大妃は嘲笑うような笑みをその面に浮かべているだけだ。
「内命(ネイミヨウ)婦(プ)の監督は後宮で行うものであり、たとえ国王殿下とはいえども無闇に口出しはできぬのがならわし。そなたも仮にも淑容の位階を賜る側室であれば、そのようなことくらい存じておろう。後宮内で起きた揉め事を殿下に訴え、泣きつこうとは殿下にお仕えする者としての配慮が足らぬ。ご政務でお忙しい殿下をつまらぬことでお患わせてしてはならぬとそのようなことが判らぬのか!」
「大妃さま、それは違います。淑容さまは何も悪くはございません。淑容さまから国王殿下に申し上げて頂くと言ったのは、この私の落ち度にございました。今日、私と諍いになったのは、三ヵ月前、淑容さまを南園の池に突き落とした者たちでございました。ゆえに、私はつい悔しくて、口走ってしまったことでございます」
崔尚宮の傍らに控えていた花芳が泣きながら叫んだ。
「守花芳、お黙りなさい」
莉彩が背後を振り返った。
―それ以上、大妃さまに楯突いては駄目。
眼顔で花芳を諭す。
「ええい、控えよッ。全く、淑容が礼儀知らずなら、仕える女官までが礼儀を知らぬと見える。大妃であるこの私に直接、話しかけてくるとは礼儀知らずもはなはだしい」
「孔尚宮。やりなさい」
大妃が顎をしゃくると、孔尚宮が鞭を持って莉彩に近づいた。
「今日という今日は、その歪みきった性根をたたき直してやろう。淑容、そなたは大方、その色香で殿下を夜毎誑かし、ご寝所で様々にねだり事をしておるのであろう。こたびの一件でそれがよく判った」
大妃がはるか前方から唾棄するように言う。
「大妃さま、それはあまりに酷いお言葉にございます。私は、ご寝所でそのようなふるまいを致したことは一度としてございません!」
莉彩の眼に悔し涙が滲む。
何故、どうして、この女はここまで自分を貶め、憎むのか。莉彩を憎むのは、大妃が王を憎んでいるからだ。徳宗が見向きもしない側室であれば、大妃もまた莉彩のことなぞ歯牙にもかけなかったろう。
