
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第7章 対立
―大義名分だけを振りかざしたとて、内実が伴わなければ得るところは何もありません。向こうに何の落ち度もなく、表立った示威行動もないのに、こちらが下手に動けば、かえって脚許を掬われるでしょう。最悪、我々のしていること自体が無意味どころか、単なる私利私欲のための謀略だと言われかねませんよ。祖父の動向はともかく、今はまだ動くべきではないでしょうね。何か仕掛けてくるとすれば、あちらは必ずいつかは動くはずです。たとえ根比べになったとしても、先に動いた方が負ける―、それだけは明白です。
結局、その日の会合はこれといった実りもないままに終わった。
そのさんざんな結果に終わった会談の顛末を莉彩に語った後、王は疲れ切ったように吐息をついた。
「おかしなことだ。元々、改革派はその名のごとく、旧弊な因習―権門からばかり大臣を出すことを止めさせることが目的だった。淀んだ朝廷内の人事を刷新し、政治に新しい風を吹き込むことこそが予の夢であり、悲願であった。それが、今やどうだ? 改革は名ばかりとなり、同志である仲間を疑い、相手を陥れることしか念頭にない。これでは、大妃の率いる保守派と何ら変わりないではないか」
どうやら、孫大監が保守派から革新派に寝返ったことは、今のところはあまり良い影響を与えていないらしい。淑妍の思惑は目下、当たってはいないようだ。
それに―、孫大監が莉彩の生むであろう王子に期待を賭けているという話もまた莉彩には憂鬱だった。
孫大監の腹は読めている。養女の生んだ王子―即ち外孫を世子に立て、ゆく末は国王の外戚として権力をふるおうと考えているのだ。左議政の地位にある現在も十分に栄華を極めていると思うのだが、人間というものはやはり、更に大きな権力を望むものなのだろうか。
徳宗の寵愛を受けるようになった今、子どもは欲しい。―たとえ、それが歴史にまた新たな影響を与えることになったとしても、愛する男の子を身籠もり、生みたいと願うのは女としてはごく自然だ。
けれど、莉彩はできるだけ王子ではなく翁主(王女)を授かりたいと思っている。男の子ではなく女の子なら、歴史への関与も極力少なくて済むし、何より王位を巡る争いや政争に巻き込まれることもない。
結局、その日の会合はこれといった実りもないままに終わった。
そのさんざんな結果に終わった会談の顛末を莉彩に語った後、王は疲れ切ったように吐息をついた。
「おかしなことだ。元々、改革派はその名のごとく、旧弊な因習―権門からばかり大臣を出すことを止めさせることが目的だった。淀んだ朝廷内の人事を刷新し、政治に新しい風を吹き込むことこそが予の夢であり、悲願であった。それが、今やどうだ? 改革は名ばかりとなり、同志である仲間を疑い、相手を陥れることしか念頭にない。これでは、大妃の率いる保守派と何ら変わりないではないか」
どうやら、孫大監が保守派から革新派に寝返ったことは、今のところはあまり良い影響を与えていないらしい。淑妍の思惑は目下、当たってはいないようだ。
それに―、孫大監が莉彩の生むであろう王子に期待を賭けているという話もまた莉彩には憂鬱だった。
孫大監の腹は読めている。養女の生んだ王子―即ち外孫を世子に立て、ゆく末は国王の外戚として権力をふるおうと考えているのだ。左議政の地位にある現在も十分に栄華を極めていると思うのだが、人間というものはやはり、更に大きな権力を望むものなのだろうか。
徳宗の寵愛を受けるようになった今、子どもは欲しい。―たとえ、それが歴史にまた新たな影響を与えることになったとしても、愛する男の子を身籠もり、生みたいと願うのは女としてはごく自然だ。
けれど、莉彩はできるだけ王子ではなく翁主(王女)を授かりたいと思っている。男の子ではなく女の子なら、歴史への関与も極力少なくて済むし、何より王位を巡る争いや政争に巻き込まれることもない。
