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約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever

第7章 対立

 とりなすように言う東善に、尚顕は声を荒げた。
―東善どのこそ、一体、誰の味方で、どちちを支持しておられるのですかな? 考えてみれば、そなたは孫大監が我々の方に寝返られてからすぐに吏曹参判に昇格された。孫大監が我が革新派においでになった暁にこそ、きゃつらを一挙に叩きのめすという段取りになっていたはずなのに、何故、いつまで経っても手をこまねいているのですか!? 東善どのはご自分の立身と保身だけできていれば、それで良いと? 大体、孫大監は今一つ信用できませぬ。あの御仁は真、我等の方に付くおつもりなのでしょうか。こちらに寝返ったのは実は見せかけだけであって、本当のところはいまだに大妃さま一味と繋がっているのではありませんか?
―兵書参知。そなたは自分の申していることが判っておるのか? 到底、正気とは思えぬ言葉だ。仲間を信頼せずして、いかがする? 自分が人を疑えば、人もまた自分に疑念を抱くようになる。そうやって生まれた不信の芽が大きくはびこり、改革派の土台そのものが危うくなるのが、そなたには判らぬはずもなかろう。ここには孫大監の孫である東善もいるのだぞ? 孫の前で大監を愚弄するというのか!
 徳宗が憮然として言うと、尚顕はそのまま席を立ってしまった。
―どうやら、今日のところは私、頭を冷やして出直して参った方がよろしいようにございます。失礼ながら、これにて退出させて頂きまする。
―東善、尚顕も何も本気で申したわけではなかろう。あまり気にするでないぞ。
 王は幼い頃からの親友でもある東善を宥めるように言った。
 東善は呆れたように肩をすくめる。
―確かに我が祖父は、私が申すのも何ですが、計り知れないところがありますからね。祖父が我々保守派につく気になったのは、やはり何と言っても殿下ご寵愛の孫淑容さまの後ろ盾となったことが最大の原因ですゆえ。祖父は見かけは好々爺ですが、内面はとんでもない腹黒い狸です。孫淑容さまがいずれ殿下の王子をお生みになる可能性に賭けているのですよ。ですから、その望みが叶えられなかったときには、正直、祖父がどう出るかは私にも判りません。
 その後、東善もまた改革については慎重を期すべきで、徳宗と同意見だと述べた。

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