
マッチ売りの少女と死神さん
第2章 12月31日…死神さんに穢されました
────まったくこの子は……本当に何て単純なんだろう?
青年は意味もなくケーキをフォークでつついていた。
「う、うん。 まあ…そんなところかなあ。 君がそう思うならそれでいいよお」
……結局、皮肉にもホーリーと名付けられてしまった死神の青年は曖昧に返事をした。
人間でないという意味では当たらずとも遠からずだし、訂正する必要を感じなかったからだ。
しかしサラはそんな返事にも満たされた笑みを浮かべる。
「ありがとうございます! 私はてっきり、クリスマスには家族が……ああ!! ようやく……来てくださらなかった理由が分かりました。 私はちゃんとおばあさんの言葉を信じるべきだったのに。 どうか神様、不信心だった私をお許しください」
ひと息に言葉を並べたサラはしまいに椅子から降りて跪いた。
ホーリーに向かって胸の前で手を握り、懺悔をはじめる。
自分に拝まれても困る。 ホーリーは目の前の少女を見下ろし、きまり悪げにボリボリと頭を掻いた。
せっかくサラに会えたというのに。
先程から感じている苛立ちの理由がホーリーには分からなかった。
「……やっぱりサラちゃんは根っからお人好しだねえ」
「はい?」
真顔に戻ったホーリーが付け加えた。
「ねえ、君はどうして自分がここに連れてこられたのか知ってるの?」
サラが口ごもる。
あらためてキョロキョロと辺りを見回した。
「い、いいえ?」
首を横に振ると、来た時は湿っていた彼女の長い髪がさらさらと揺れた。
「そう」
突然、ホーリーがあっという間にサラとの間合いをつめる。
サラがなにか言う前に後ろに倒れた。
ホーリーに背中を支えられていたお陰で、サラは椅子から転げ落ちずに済んだ。
「これでも分からないかなあ?」
ホーリーが少女の細い首に手を回す。
硬い床にサラの背中が押し付けられていた。
男性の体の重みが遠慮なしにのしかかる。
「かっ、…ホ…さ……」
息苦しさにサラが顔を歪ませた。
「言ってなかったけどさあ。 実は僕、君を迎えにきたんだよねえ」
