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マッチ売りの少女と死神さん

第2章 12月31日…死神さんに穢されました



「……もちろんだよ。 こっちは実は僕が作ったんだ。 サラちゃんに食べて欲しくて焼いたんだよお」

咄嗟に口から出た嘘だった。
まるで縫い付けられたかのように、青年は彼女の顔から目が離せなかった。

「いっ、いただきます!!」

サラは嬉しそうに頷くと、フォークを使わずに手でかぶりつく。
その様子を見守っている青年に気付き、サラは膨らんでいた頬を急いで動かし、鶏肉を慌てて飲み込んだ。

「こっちも美味しいです!」

青年はホッとしたような照れたような笑みを浮かべた。

「ありがとう、ホーリーさん!」

サラはハッとしたように青年に目を向けた。

「……あの、ええとお名前……ひ、ヒイラギの名前は、どうでしょうか…?」

「……んんー? ホーリー? 僕?」

青年は片眉をあげてケーキの飾りを手に取った。

「僕の名前? このギザギザの葉っぱ?」

「ご馳走を出してくれて……そんな奇跡を起こせるなんて、聖者の意味合いにぴったりだと思ったんです」

「聖者……」

「……違うんですか? えっと……じゃあ、て、天使様?」

おずおずと尋ねるサラに、青年は引きつった顔で無理やり笑いを浮かべる。
サラはしばらく黙って青年を見上げていたが、やがて何かに気づいたように再びはっと息を飲んだ。

「か、神様……?」

両手のひらを口に当て、潤んだ瞳で青年を見た。

「は?」

「それなら納得がいきます! お料理が上手だし、私の色々なことを知っているし。 あ、そうだわ、きっとそうです!」

「………」

(神って料理出来たっけ?)

「……違いましたか?」

期待に満ちた目で見つめられ、青年は言葉に詰まった。


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