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マッチ売りの少女と死神さん

第2章 12月31日…死神さんに穢されました


(相変わらず君は、そんなふうにすぐ信じちゃうんだよねえ……ちょっと親切にしてあげただけなのにさあ。 何てかわいくって滑稽なんだろう? ふふふ)

おかしくてたまらない、そんな感情を口元にあてた拳で隠しながら青年はサラに声をかけた。

「遠慮は無しだよお? 上のお菓子も食べてみるといいよ?」

青年が椅子をすすめてあげると、サラが感極まった様子で目を輝かせた。

(そうそう、それで食べようとした途端に……またこれを消したら…ハアッ…僕がこの子を失望させられるなんて)

彼は興奮のあまり、再び下半身に血が昇ってくるのを感じた。

「だ、だけど…何だか、もったいないわ」

「ッハアハア……何がさあ?」

「なぜかしら。 触れると…まるで、音もなく消えてしまいそう」

「…!?…き、消えないよおお?」

ギクッとして返事をすると、サラは遠慮がちに青年の顔を見た。

「ほ、本当に……?」

「ほらほら、クリームを指ですくってごらん」

サラはクリームを指に取り、おそるおそる一口分を口に入れた。
もぐもぐと咀嚼する度に、みるみる頬が紅潮していく。
口の端についたクリームまで指で拭って舐めとる。

「おいしい! お、おいしいわ!」

サラは感激に目を丸く見開きながら青年を見上げた。
それからはっとしたように慌てて視線をそらす。
どうやら恥ずかしくなったらしい。

「……あ、あの……ごめんなさい……」

そんなサラの反応を見た青年は勢いで、部屋に備え付けの小皿とフォークを手渡した。
サラは丁寧にお礼を言い、お皿を受け取った。
青年はサラから視線を外さなかった。

「いただきますっ……!」

手を合わせたサラは豪快にフォークでケーキをすくった。


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