
マッチ売りの少女と死神さん
第2章 12月31日…死神さんに穢されました
(うふふふ……驚いてるねえ)
青年は内心、ほくそ笑んでいた。
彼はサラのことをよくわかっていた。
何にしろこの娘は単純なのか馬鹿なのか。 異様に騙されやすいたちなのだ。
青年がこの少女をお気に入りで仕方がない理由────彼自身、冥界で何度も考えていたことである。
栗色の髪と同じ色、丸く大きな瞳をした愛らしい少女。
実際の歳はじきに15にとどく。
それなのにもっと幼く見える。
なぜなら同い年の子に較べて、サラは痩せて貧弱だからだ。
ほんの数年前までは、サラの髪はもっと艶やかな巻き毛だったし、頬は柔らかそうに丸みを帯びていた。
薄い肌着から伸びている、小枝のようにか細い腕も、栄養不足によるものだった。
しかしそんなサラの外見も、青年からすると魅力でしかない。
ずっとずっと長い間、映像でしか会えなかった女の子。
サラが動いて自分に反応してくれているのだ。
昔から、何かを期待したサラが一瞬にして絶望に陥るさまは、まったく素晴らしいのひと言だった。
(さあ、どうやってこの子をがっかりさせてやろうか。 自暴自棄になり続けたこの娘は、どんな悪い子になるんだろう?)
青年にとって、胸の奥底からあふれ出る期待と喜びを抑えることは難しかった。
事実、サラは目を奪われたように目の前のケーキを食い入るように見つめている。
「私、誰かが来たのに、ちっとも気付かなかったわ……ああ、それにしても、このクリームの真っ白なこと! まるで朝一番の雪のよう!」
つい先ほどまで、あんなに警戒していた青年にさえ、好意的な感情を向けている。
屈んでいる彼女の、襟元から垣間見える、浅い胸の谷間や控えめな先端の膨らみにも、青年は喉を鳴らした。
