
マッチ売りの少女と死神さん
第2章 12月31日…死神さんに穢されました
「────サラちゃん、ほら見てよ」
青年の声にサラが我に返ると、暖炉の暖かな光が足元を照らしていた。
「え?…わ、わあ…っ!」
直後、サラは思わず歓声をあげた。
サラの視界に飛び込んできたのは、輝く明るい炎を背景に、華やかに飾り立てられた、巨大なケーキだった。
「美味しそうでしょお?」
テーブルの傍に立っている青年が言い、手に持っていたマッチの燃えさしを暖炉に放る。
丸いケーキの上には、木の切り株を思わせる形をした別のケーキが重なっていた。
白いクリームが表面を覆い尽くし、そこに散りばめられた赤い果物や小さなお菓子は、まるでプレゼント箱の飾り付けのよう。
こんなケーキを目にしたのは初めてだった。
眩しくて何度も瞬きをした。
「………私、こんなケーキを今まで見たことがないわ。 すごくきれい。 これ、どうしたの?」
驚きのあまり、サラが思わず普通の口調に戻る。
赤々と燃える暖炉の炎が、冷え切っていたサラの手足を温めてくれていた。
「クリームをひと口すくって舐めてみてよ。 甘くって美味しいよお」
「これを? え…で、でも……」
サラはそういえば、朝から何も食べていなかったことに気付いた。
それでも躊躇して、突然目の前に現れたケーキと、得意げな表情の青年を交互に見た。
