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マッチ売りの少女と死神さん

第2章 12月31日…死神さんに穢されました



「な、名前…?」

「犬が好き? ドギーはどうかなあ?」

「いい、いぬ?」

「サラちゃん、よく野良犬を撫でてたからさ」

(どうしてそんなことを知っているのかしら)

青年は首を傾げてサラの答えを待っていた。
ドギーとは犬の英語名に当たる。

「……いくらなんでも、名前が犬は…ちょっと……名前、無いんですか」

「そうだよお。 じゃあ、カリヌは?」

「カリヌ……って?」

きょとんとした顔で尋ねるとホーリーも首を傾げた。

「さあ?」

「………」

「サラちゃん、クリスマスのプレゼントは何だったの? 名前はそれがいいよ」

それまであっけに取られていたサラは、青年から視線を外して俯いた。

(クリスマスプレゼントなんて、もう何年ももらってないわ…)

「くまのぬいぐるみ? それともリボンをつけた女の子のお人形……新しい髪飾りにオルゴール? ツリーの下のプレゼントは何だったのかなあ」

青年の言葉にサラが驚きに目を見張った。
それらはかつて、家族が生きていた時に、彼女がもらったものだったからだ。

昔、イブの朝に起きたサラは、ツリーの下にあるいくつものプレゼントの箱に歓声をあげたものだ。
その際に、おばあさんが言ってくれたことを、頭に思い浮かべた。

『クリスマスのプレゼントはサラが良い子にしていた証拠だよ。 神様はちゃあんと見ていてくれてるんだからね』

おばあさんが亡くなり、お父さんと二人きりになったはじめの年。
その時のクリスマスもサラはもみの木を部屋に運んだ。
もみの枝やヒイラギの葉のリースを飾り付けて心待ちにしていた。

しかしクリスマスの朝、サラが運んだ小さなツリーの下には何もなかった。
その瞬間、彼女はあれらが家族からのプレゼントであったことを初めて理解したのだった。

そして今年もサラにプレゼントは贈られなかった。

(あれからプレゼントがないのは…きっと私が、お父さんにとって良い子じゃないから……)

サラは悲しい気持ちで膝の上の手を握りこんだ。


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