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マッチ売りの少女と死神さん

第2章 12月31日…死神さんに穢されました


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床の上にしわくちゃになったサラの衣服が丸めて放置されていた。
青年から出された体液が、布のしわの間に溜まっている。

サラはひざを抱えて泣いていた。

「うっ…ぐす…っ」

どこに連れてこられたのか分からない。
加えて、得体の知れない人に、恐ろしいものを無理やり見せつけられたからだった。

(あ……あんなに汚れてしまったら、もう着れないわ。 なんだか変な汁がついたし)

静まり返った部屋の中で、少女は俯いていた。
暖炉に火を入れる音が耳に入る。

「はああ。 気持ちよかったああ……やっぱり生で見るサラちゃんはいいよお……半年分溜め込んだだけあったなあ……」

恍惚とした声で呟いた青年だった。
サラの泣き声に気付いて傍へとにじり寄る。

「なに泣いてるのお?」

青年の気配を近くに感じながらも、サラは怖くて顔を上げることが出来なかった。
突然、青年が仰向けにスライディングしながらズサアッと視界に割って入ってくる。

「ねえ!? 」
「ひッ!?」

青年は床に頭を付け、サラの顔を下から覗き込んでいた。

「ああ、サラちゃんがこんな近くに……」

混乱していたサラはどうでもいいことに気付いた。
仰向けに寝そべり、うっとりとした眼差しを向けてくる青年の肌は、異様に青白くて綺麗だった。

「ところでサラちゃん、さっき、僕の自慰行為を覗いたよね?」

青年がソワソワした表情で訊いてきた。

「え…あ、じ…じい……?」

サラには言葉の意味が理解できなかった。
単語を反芻したサラに、青年がニヤア、と口の方はじをあげる。
何が嬉しいのか肩を揺らして「クックッ」と笑いをこぼす。

「君は悪い子だねええ?……クッ、クッ…」

「……」

(この人……あいかわらず気味が悪いし、何を言ってるのか全然分からないけど…今は、機嫌がよさそう……?)

とにかくこの場から離れたい一心のサラは、涙を呑み込み小さな声で言ってみる。

「あの。 わ、私…家に…帰らなくちゃ」

「んー、でも…ちょおっと不便だよねえ?」

「えっ…あ…の、私…か、家族が心配して」

「ねえねえ、名前をつけてよ」

話が噛み合っていなかった。

「僕にも名前をつけてよ。 サラちゃんの好きなものの名前をつけてよ」

唐突な青年の言葉に驚いたサラが、ぽかんと口を開けたまま、青年を見つめた。



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