
マッチ売りの少女と死神さん
第2章 12月31日…死神さんに穢されました
お父さんのと似ているようでどこか違う。
ただそれがさらけ出していいものかどうかぐらいは、サラにも分かる。
目を逸らそうとして、青年の手が小刻みに動いているのが視界に入った。
「なにを……や、やめて!」
棒状のものを、片手でしごいている青年がブツブツと呟いていた。
見たくも聞きたくもないとサラが思っても、狭い室内では難しい。
「サラちゃんの……サラちゃんの服…さてはこれ、何日も洗ってないよねええ?……くんくん…サラちゃんに見られながらなんて……っ」
「……いやあっ」
恥ずかしい気持ちももちろんある。
だがその前にサラは、背筋にぞっとするものを感じた。
たまらず青年から洋服を取り上げようと近付く。
「来るな!」
「っ!!?」
青年にきつい口調で怒鳴られ、サラはその場に立ちすくんだ。
息を詰めていると、すぐに彼の目からするどい光が消え失せ、元のような薄笑いを浮かべる。
そしてサラの衣服を逃すまいとでもいうように、青年が両腕でそれをしっかりと抱きしめた。
「それ以上はまだだよお。 刺激が強すぎだからねえ」
サラは混乱しながらも、青年のお腹の下でそそり立っているものから顔を背けた。
「目を逸らすな!!」
「っ!!!?」
また怒鳴られ、サラが再びびくっと身を震わせた。
程なく、固唾を呑んでいるサラを認めて満足そうに頷いた青年は、ふたたび手で棒状のものをしごき始める。
「そう……その位置で。 そうっ、それ! 怯えた顔して、遠巻きに見ててねえ……次、僕から目逸らしたら殺すから」
興奮した面持ちでそんなことを言われ、サラは訳が分からなかった。
無理に開いていた目が乾き、滲んで涙が出てきた。
すぐにでもこの場から逃げたいのに体が動かない。
手を激しく上下に動かしながら青年が天井を仰ぐ。
「あーそうそう、いいよイイよ、あーイクいくイきそううっ」
「……っ」
(あ、ああ……神様。 お助けください……)
サラは口を小さく動かして祈った。
いっそ消え入りたい気持ちをこらえて、少女はその場に立ち続けた。
