
マッチ売りの少女と死神さん
第5章 1月2日…だからってXXは無理です
それからしばらくして彼はその場を離れたようだ。
ノックの音が聞こえなくなった。
後ろを振り返ったローラがサラとクラース氏を交互に見てはしゃいだ声を出す。
「やっぱりね! ねえ、お父さん。 私の言ったとおりでしょう!? おねえちゃんも私と同じなんでしょう?」
「……サラさんもローラと同じに見えるのですか? 聞いた時は、まさかと思いましたが」
サラはローラが自分に懐いていた理由が分かった。
今朝にホーリーと一緒にいて、自分も彼女と同じ性質を持っていると思ったらしい。
それとは違うのだけどと思うも、嬉しそうな様子のローラを見ているとすべて否定するのは気が引けた。
「はい…あのでも。 小人? などは見えませんけど……見えないからいないというのは……なんだか少し違うような気がします。 ローラちゃんは善いものに守られてるそうですよ」
「そのような考えは実在論や唯物論といわれるものと対にあります。 しかしたとえば……われわれに見えずとも、病のもとはこの空気の中にある。 何も感じずともこの星は回転しています。 そんな思想はすでに当たり前ではありますが、この子もひょっとしたら未来を導く可能性があると?」
クラース氏の元にローラが駆け寄り、彼はわが子を優しく抱き上げた。
「……ああ、そうなのですね。 ローラは……神や亡き妻から、素晴らしいギフトをいただいた子なのかもしれません。 本当のところ、私も自分の子を疑いたくは無かったのです」
たとえ二人きりでも微笑ましい良い家族だ、とサラは思った。
「ローラちゃんお願い。 あの男の人のことを詳しく教えてくれる?」
前に進み出たサラがローラに言うと彼女は得意げに首を縦に振ってくれた。
それと同時にクラース氏も
「サラさん。 良ければ私の話も聞いてください。 さあさあ、新しくお茶をいれましょう」
と言い、三人はダイニングに戻った。
