
マッチ売りの少女と死神さん
第5章 1月2日…だからってXXは無理です
そこにはこれもまた驚いた表情のホーリーがローラと向かい合っていた。
「ローラ。 お前はまた……誰もいないといつも言っているだろう?」
クラース氏が呆れた様子で二人の後を追ってきた。
その後にサラに向かって苦笑しながら説明をする。
「昔からなんですよ。 何年か前から何もない所にあそこに人がいる、小さな人がいるなどと言い始めて。 そのせいで周りに気味悪がられ、学校でもいじめを受けて」
一方、クラース氏が話している間、ホーリーとローラも言葉を交わしていた。
「死の影なんて何もない。 まあ、見たとこ君はずいぶんと色んなものに守られてるねえ。 僕とは真逆に」
「今朝も会ったわ。 お兄ちゃんはまるでお人形さんみたいね? 血が出てるけどちっとも怖くないわ」
(え………血?)
サラにはそんなものは見えない。
いつものホーリーだと思った。
するとじっと彼を凝視しているサラの視線に気付いたホーリーが肩をすくめた。
「ミス・ローラ。 君を加護してる者から、僕は全力で嫌われてるみたいだよ。 サラちゃん、もう帰ろう」
「ホーリーさん……怪我をしてるの? どこか痛いのなら」
それに細く息を吐いた彼が
「………君には関係ないよ」
ゆっくりとサラから目を外した。
………愛を平気で口にする彼は大事な所で自分をはねつける。
今までもいつもそうだった。
(それが神様だから死神だからなんていわれても、私には分からないもの)
サラはホーリーに対して好感を持っているのを自覚していた。
恋など今までしたことがない。
友情や親愛の情に近いのかもしれない。
出会ったばかりの彼に対するこの気持ちが何なのかは分からないにしても。
それは置いてもサラは悲しい気持ちになった。
一人の時よりさびしくて沈んだ気持ちになった。
「か、帰らないわ。 私はどうしても心配してしまうし、ホーリーさんのことを知りたくなるんだもの」
「サラ」
戸口の隙間から気遣わしそうなホーリーの表情がみえた。
「………あなたはとても勝手な人だわ」
そしてサラはそのままドアを閉じた。
