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マッチ売りの少女と死神さん

第5章 1月2日…だからってXXは無理です



「君のおばあさんは私の恩人でもある………しかしうちのローラも他人のことは言えません。 あの子も学校に行かずに、ずっと家に引きこもっていますから」

「ローラちゃんみたいな明るい子が?」

サラにはちっともそうはみえなかった。
ため息をつく代わりに軽く視線を落とした氏が眉間の間にしわを寄せる。

「……実は少しばかり問題が」


と、話をしていた時にコン、コンと出入口の方向からノッカーをぶつける音が聴こえた。
サラが食堂の大時計を見るとちょうど訪問から二時間が経ったところだ。

「はて、今日は来客はもうないはずだが」

考え込むように椅子から腰をあげるクラース氏。

「………あ」

サラは……つい、彼に声をかけそびれてしまった。
きっとホーリーが自分を迎えに来たのだと思う。

(帰るべき……よね)

けれどもサラはおばあさんの話が気にかかっていた。
初めてのお呼ばれもあり、もう少しここにいたいのが本音だった。

それに今はまだホーリーと顔を合わせたくなかった。
彼に対してどう接すればいいのか分からない。


案の定、

「外には誰もいなかったよ。 おかしいな」

とクラース氏が頭に手をやりながら食堂に戻ってくる。

そしてしばらくするとコンコン、ともう一度。

「イタズラか? ここは大通りだから危険は無いと思うのだが」

氏が注意深く戸口に目を向ける。

(……というより、もはやこれは心霊現象だわ)

彼は自分が出るまで戸をたたき続けるつもりだろうか。
首を横に振ったサラが席を立ちかける。


すると今度は

「おねえちゃん! 男の人が迎えにきたよ」

玄関口にいるらしいローラが呼ぶものだから、それを聞いたサラは大いに驚いた。

(ローラちゃんにホーリーさんの姿が見えるということ? ま、まさかこんな小さな子が、死……)

もしかしたら本当は人がいるのかもしれない。 嫌な予感を頭から吹き飛ばそうと慌てて戸口に向かう。


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