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マッチ売りの少女と死神さん

第5章 1月2日…だからってXXは無理です


赤いクロスが掛けられたテーブルは暖かみがあり、海外で商売をしているだけあって室内の小物などは珍しい形をしていた。
木を彫った写真立てや背の大きさもある時計、ぴかぴか光る銀色のシガレットケース………
それら一つ一つに目を置きながら、サラは興味深そうにクラース氏に質問をした。

白髪が少し混ざって笑顔を絶やさない、クラース氏は親切な人だった。
ヘーゼルの瞳が陽の光のようだとサラは思った。

「おねえちゃん、あとからご本を一緒に読みたいわ!」

クラース氏は椅子にゆったりと座り、ローラがサラにせがむのをにこやかに見守っている。

「連れ合いを六年前に亡くしましてね。 私が留守がちなのもあり、我儘に育ってしまいましたが……こら、あまりはしゃぐとサラさんがスープをこぼしてしまう」

氏が普段からローラのことをとても可愛がっているのも、年端もいかないサラのことを客として気にかけてくれているのもよく分かった。

それにしてもとサラは不思議に思った。
行きずりに自分の娘を助けたにしてはクラース氏が親切過ぎるように思えたのだ。

「サラさんは寄宿舎には入っていないようですが、学校へは?」

夕食後に紅茶を各自の前に置いてからクラース氏が尋ねてきた。

「私は行っていません……家のことが忙しくて」

サラは俯いてスプーンでカップをかき混ぜながら恥ずかしそうに答えた。

「………君のご家族は確か、女子でも学業を修めるべきという家風だったように思っていましたが」

「え?」

「気を悪くしないで欲しい。 実は私は、サラさんのおばあさんとは旧知の仲でした。 もう三十年になるだろうか。 亡くなるまでずっと文通をしていてね」

氏の思いがけない言葉にサラは驚いて目を見張った。


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