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マッチ売りの少女と死神さん

第5章 1月2日…だからってXXは無理です


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昨日あらかじめもらっていたメモを頼りに歩いても、宿からほんの三ブロックほど。

クラース氏の家は豪邸とまではいかないものの。
とはいっても、サラからするとそこは充分裕福な家庭にみえた。

シンプルなデザインのノッカーがドアの上部についていた。
背伸びをして二、三度叩くと待ち構えていたようにローラが出迎えてくれた。

「サラおねえちゃん、いらっしゃいませ!」

クラース氏から言われたのだろう、ローラがぎこちなくスカートの裾をつまんで頭を下げる。

「こんばんは、ローラちゃん。 お招きありがとう」

サラもローラに同じ調子で挨拶を返した。
自分とおんなじ鳶色の髪と瞳。
ただでさえ小さい頃、ずっと弟か妹が欲しかったサラは、どうしてもローラぐらいの歳の子を可愛く思ってしまうのだ。

「サラさん、良く来られました。 おや、可愛らしいコートですな」

「見て、白いブーツも! 赤いリポンがとっても素敵」

二人がホーリーが贈ってくれたものを口々に褒めてくれた。
するとサラの胸がチクリと痛んだ。
ホーリーと後味の悪い別れ方をしたせいだった。


クラース氏と一人娘のローラは父娘の二人暮らしらしい。
氏が長期で不在の時には手伝いの人が来るのだと話してくれた。

さっそく食堂に通された時は、ろくなテーブルマナーなど知らない自分が、上手く客人として振る舞えるのかなどとサラは心配していたが、そのレベルはローラも同じだった。

「アーティチョークはフォークの背でしごいで食べなさい」

二人が端っこから齧ろうとすると氏は優しく注意してくれ、肉も二人が食べやすいよう、あらかじめ小さく切り分けて取り皿に乗せてくれた。

サラはメインのある食事をしたのは久しぶりだった。
野菜がふんだんに入ったスープも味がなじんでとても美味しく、ついお代わりをしてしまう。
サラの実家ではもっぱら豆のスープとパンがあればいい方だったからだ。

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