
マッチ売りの少女と死神さん
第5章 1月2日…だからってXXは無理です
彼は最初からこういう人だった。
………きっと涙という言葉は知っていても、その意味を理解出来ない人だ。
それでも、ううん、そうじゃない。 と、サラのもう一つの心が否定する。
彼は理解出来ないわけじゃない。
だって後悔してるって言っていたもの。
私が寒くないようにって、プレゼントをくれたもの。
涙をこらえて必死で考えているとホーリーが両頬を片手でつかんで彼女の顔を上を向けた。
「ふーん…」
至近距離でジロジロサラの顔に見入りその直後、
「っ?」
両方の手でサラの顔を挟む。
かと思うと、ホーリーはなんとサラのまぶたというか、眼球ごと顔の上半分をベロリと舐めてきた。
目そのものを舐められたのなどもちろん初めてで、サラは袋を床に落とし頭が真っ白になった。
「そんな目をするんだ? 濡れたビー玉みたいに深くて鋭い感じ。 綺麗だねえ……ねえ、シようよ?」
軽い調子でからかってくる。
「……わ、たしは…ホーリーさんを心配したんですよ」
「は…頼んでないけど」
ホーリーがサラを馬鹿にしたように鼻で笑った。
この人は本当はちゃんと話せば分かってくれる人だとサラは信じている。
彼女はすうっと息を吸うと、なるべく気を落ち着けて口を開いた。
「私はホーリーさんの体を心配したんです。 だけど心配っていう気持ちをホーリーさんに放り投げられたから、それで寂しくて悔しかったんです。 ホーリーさんにもきっと私の気持ちは分かりますよね?」
「だから?」
冷たく突き放す言葉を投げて、
「だから…」
彼の顔が下に降りてきた。
そのまま嚙みつかれるかと思うほどに口を強く押し付ける。
「っん…!?……っう」
