
マッチ売りの少女と死神さん
第5章 1月2日…だからってXXは無理です
かぶせ気味に断固拒絶するもホーリーが食い下がってくる。
「ダメだよお。 もうだってそれ、受け取ったよねえ?」
「こんなもの……っ…没収です!!」
ついでに彼が手に持っていた複雑な形状の棒も取り上げた。
「ああっ…」
と、ホーリーが未練がましそうに手を伸ばす。
(彼に預けておく方が危ないわ。 いつ使い出すか分からないもの)
そう確信したサラは床に散らばる多種多様な棒を素早く両腕でかき集め、洋服が入っていた紙袋の中にぐいぐい押し込んだ。
「ちょっ、樹脂製なんだからもっと丁寧にしてよお」
「それはサラちゃんにはまだ早いんじゃないかなあ」
などと横やりを入れる彼も無視する。
なぜならサラはわりと本気で怒っていた。
(全くなんて人かしら。 他人が心配する気持ちをこんなことに使うなんて。 いくらなんでも悪ふざけが過ぎるわ!)
手で持つと結構な重さがあったがサラは力をこめて袋を無理やり持ち上げた。
「うーん……参ったねえ」
背後で参っているらしいホーリーが相変わらずのんびりとした口調だったので、余計にサラはしゃくに障った。
「今晩は私一人で行きますから、どうぞホーリーさんは怪しい研究とやらを」
「あのさあ」
袋を移動させるためにバスルームへ向かおうとするサラの目の前に長い腕が伸びてきた。
「確かに少しふざけたけど、泣く程のことお?」
「っ…通してください」
「僕さあ、サラちゃんの泣いてる顔、好きだってさっき言ったばっかりだよねえ」
サラは前を向いたまましばらく黙っていた。
「………どいてくれないと噛みつきますよ」
「むしろそれは嬉しいけどさあ。 君が怒って泣くのはどんなの? それも見せてよ」
感情が高ぶるとすぐに涙が出てしまう。
サラはこんな自分が嫌だった。
そんな彼女からは、なおさらホーリーが無神経に思えた。
