
マッチ売りの少女と死神さん
第5章 1月2日…だからってXXは無理です
何となく何となく想像出来ないわけでもなかったが、念のためにサラが聞いてみた。
「淫具とも呼ばれるねえ。 土地によっては四種類もの呼び方がある。 これなんか初心者にも使いやすいかな」
と言い、サラの膝の上に今度は初心者にも使いやすいらしいものを乗せた。
そして別のものを手に持ったホーリーが伸ばしたり広げたりと一心に棒………もとい淫具の観察をしている。
「さっきの話だけどさ、複数で楽しむというだけあって見てよこれ。 二又はおろか、三又のものまで」
「………」
「どうやって使うと思う? 両穴は分かるとして、相手は男女どちらかで体位が変わるよねえ?」
どうしてもれなくいかがわしいものなのだろう。
「………えっと…つまり、ホーリーさんはすごく頭のいいすごい馬鹿なんですね?」
サラは心の底から呆れた。
ついでに彼を尊敬したほんの十分前の自分をはげしく後悔した。
「ん、サラちゃん、なに怒ってるのお?」
ため息をついて立ち上がりかけたサラの手首をホーリーがつかむ。
軽蔑の目で彼を見下ろすもホーリーは真面目な表情を崩さない。
「………君はもっと視野の広さを持つべきだよ? 紀元前から存在していた歴史…生の繁栄の尊さを考えてごらん。 これらは現在、医療用具としてすでに確立されている。 もちろん君のおばあさんの時代にもねえ」
「い、医療……?」
おばあさんというワードにサラがひるむ。
彼に促されるまま、彼女がすとんと元の場所に座った。
「ここから二つほど隣国は今や世界一の先進工業国だねえ。 さっきの君のような女性のヒステリーは性の不満が最大の原因とされているし」
彼の話を聞きながらサラは気付いた。
自分は確かに今まで性に関することを毛嫌いしていた。
「そこでは医師が自ら女性の秘部をマッサージするんだよ」
「お医者様が……?」
自らの高慢な偏見が癖になり、お父さんの相手に感じていたように、過剰な拒否反応をどうしても持ってしまう。
本来は、想い合っているのなら構わないのだ。
もう一度サラは自分に言い聞かせる。
