
マッチ売りの少女と死神さん
第5章 1月2日…だからってXXは無理です
そしてサラは自分も彼と同じにホーリーのことをもっと知りたいと思った。
「ホーリーさんの所にも学校があったのですか?」
身を乗り出した彼女が興味深そうに部屋の中のものを観察し始めた。
「え?」
と彼は一瞬いぶかしげな顔をしてああ、と頷き説明した。
「ないよ。 僕は…そうだねえ。 ずっと世界の歴史書を読んで育ったようなものだから」
先生も無しに独学で色んな知識を見付けた、そんな人物はサラの周りにはいない。
彼女は思わず感嘆の声をあげた。
「ご自分で…!? それは凄いです! それでは、これらの不思議なものは何か意味があるんですか?」
「大したことはないよ。 今の僕に出来ないことの解析をね。 どうやら熱に関係があるのかなあ。 暖かい物質や冷たい物質を出そうとするとイメージが狂うらしい。 冥界では温度変化がないからさ」
サラは単にミルクが出なくなっただけかと思っていたが、ホーリーの考えは違ったようだ。
そして自ら分析しようと言葉を並べはじめた彼に、少女はますます尊敬のまなざしを向けた。
奇跡というものは単に呪文を唱えたり指を鳴らしたりして起こるわけではなく、彼自身のたゆまぬ努力があるらしい。
「となるとだ。 次に欠けるのは何だろうね…生物、時間……いやあ、楽しいねえ? クッ…ククク」
腕を組んだホーリーが愉快そうに肩を揺らす。
………そうは思うも、やはりサラには彼の話は難しく聞こえる。
(特に楽しくないしさっぱり分からないわ……?)
「そのかたまりは何ですか?」
サラはとりあえず一番遠くにあるゴチャゴチャを指でさしてみた。
彼が真面目な顔で前方に目を配り、それを受けて彼女がきちんと背を正した。
「ん、まずは時代と国別に分けてみた。 これが一等古く紀元前だね」
(紀元前。 とてつもなく昔だと聞いたことがあるわ。 そう、ひいおばあさんがまだ生まれていない頃の話ね)
サラがゆっくりと頷きを返す。
