
ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
「秘密ありげな美人母娘。……SNSでだって一部ではそう言われているくらいだし、火遊びされていたとしても、私は問題ないと思います。幸いここに愛津ちゃんはいません。しづやと私だって、してるし?」
「私達は、元々そういう感じだったから……」
「それは、織葉さんは立場上、ガチな恋愛まずいかも知れませんけど……良いじゃないですか。異性愛者なんて、異常者の集まりです。「清愛の輪」が中立でいることありません。あの人達がアブノーマルだということにして、織葉さんは気持ちを優先して下さい」
「英真ちゃん、そういうことじゃなくて、……」
「じゃあどういうこと?織葉」
若松がソファに座り直して、織葉を見た。
愛津とえれんの不在は、不幸中の幸いだ。彼女らがいればこんな話もしなかったろうが、英真の言い分も、以前から小耳に挟んできた彼女達の私生活を視野に入れれば、納得がいく。
「私も貴女の幸せを願ってるわ。それしか願ってないくらい」
「それは、……有り難う」
時代や国が異なれば、価値観も変わる。
ありあが投獄される前、たまにそうした話をしていた。国や時代ばかりか、個人によっても、それは大きく違ってくるのではないか。
だとしても解決の糸口が見付からない。ただ今日、若松と話して、度々織葉に押し寄せていたある一つの予感は薄れた。
「今の話、本当……?」
また、第三者の声がした。
英真ではなかった。
心臓に氷水を浴びせられたような動悸を覚えて、織葉が振り返った先に、茫然自失のえれんがいた。
