
ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
「社内恋愛禁止の会社で後輩を好きになった登場人物……初恋の人が社長さんの気に障った過去から、彼女の身を案じると、規則違反を言い出せなくて悩んでいるって、織葉さんと愛津ちゃんのことですか?!」
「ちょっと英真、……」
英真を制止したしづやに目で謝意を送って、織葉は若松に向き直る。
今しがた彼女が何を言いかけたか、聞きそびれた。母親らしく、織葉の気持ちを軽くしようとしてくれたのだろうとは、想像つく。
気休めはいらない。解決策があるものなら、それが欲しい。
「愛津ちゃんに斎藤くんの二の舞を踏ませたら、絶交。私からえれんにそう言うわ」
「そうじゃない!お義母様は間違ってない、第一、愛津ちゃんにそんなことするはずないから」
「…………」
えれんへの想いと愛津への愛慕、それらは本質的に違う。
しかし織葉は、後ろ暗さに耐えかねている。世間からすれば、今の織葉は女の敵と呼ばれても仕方がない。いつか愛津を傷付ける。もしかすればえれんも悲しむ。
「本気か火遊かって、人それぞれじゃないですか」
「英真」
織葉の心を読みでもした風なタイミングで、またぞろ英真が口を挟んだ。
